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助詞の「ながら・つつ・が・の」を扱います。短歌を中心に用例を提示します。古文単語 その53★姫うらめしげに夫人をにらむれば、夫人は興あることに思ひつつ、王の膝にもたれ、互ひに股に手を入れていじりあひ、口を吸いなどしながら、笑ひ楽しむ。

助詞の「ながら・つつ・が・の」を扱います。短歌を中心に用例を提示します。古文単語 その53

★姫うらめしげに夫人をにらむれば、夫人は興あることに思ひつつ、王の膝にもたれ、互ひに股に手を入れていじりあひ、口を吸いなどしながら、笑ひ楽しむ。

○ 明けぬれば 暮るるものとは 知りながら なほ恨めしき 朝ぼらけかな 

           後拾遺集六七二

(接続助詞シナガラ)そのままの状態を維持することをあらわす。「~したままで」「~ながら」体言、副詞、活用語の連用形などに付く。

父は太政大臣、母は有名な歌人の間に生まれたエリートでしたが、兼家の養子に出され親元から離れ生活していました。何人かの恋人もいたようですが二十三歳の時、伝染病がもとで亡くなりました。
明けぬれば(下二段明く連用形プラス完了ぬ已然形・夜があけてしまうと)
暮るるものとは知りながら(下二段暮る連体形プラスもの・四段知る連用形プラス接続助詞ながらシナガラモ・夜が明けてしまうと、貴方と別れなければならない、しかし日は暮れるものだから、夜になればまた貴方に会えるとは知っていながらも)
なほ恨めしき朝ぼらけかな(なほ・ヤハリ・形容詞恨めし連体形プラス朝ぼらけ(朝おぼろあけ・朝がおぼろに明けるころ・ほのぼの夜が明けるころ)終助詞かな詠嘆ダナア・コトヨ)

○ 君がため 春の野に出でて 若菜摘む わが衣手に 雪は降りつつ


      古今集二一 

(接続助詞つつ反復継続)連用形に付き、その動作・作用が反復・継続される意をあらわす。「何度も~して」「ずっと~して」「~し続けて」「~しながら」

温和な性格の天皇で、美男子だったので源氏物語のモデルだったと言われています。藤原基経が権力と勢力を手に入れるために、作者は無理矢理皇位につけさせられたと言われています。本人は権力に関心がなく趣味は読書と料理でした。
君がため(貴方のために・差しあげるために)
春の野に出でて若菜摘む(若菜→決まった植物の名前ではなく、食用や薬用になる草。「春の七草」のセリ、ナズナ、ゴギョウ、ハコベラ、ホトケノザ、スズナ(カブ)、スズシロ(ダイコン)などが代表的。新春に若菜を食べると邪気を払って病気が退散すると考えられており、一月七日に「七草粥」を食べるのはここから来ています。あなたのために初春に春の野辺に出て「若菜摘み」をする。
わが衣手(ころもで)に(衣手→袖または袂に・摘んでいる私の袖に)
雪は降りつつ(雪が降り降りしている・しきりに降り続いていることだよ)

○ いわしろの 浜松が枝(え)を 引き結び ま幸(さき)くあらば またかへり見む


万葉集百四十一

(格助詞・が)体言と体言を結び、後の語が前の語に属する関係をあらわす。「の」で置き換え可能な場合が多い。

作者は皇子でしたが、蘇我赤兄にだまされ、天皇への反乱をしようとしたとして捕らえられ、十九歳で絞首刑とされました。
磐代の浜松が枝を引き結び(磐代→和歌山県南部市の岩代・格助詞の連体の資格・浜松が枝・格助詞が連体格・こうして浜で松の枝を結んでいく・自分の魂をこの枝に引き結んで、この先の無事を祈りたい)
まさきくあらば(有間皇子は中大兄皇子と不仲で、謀反をたくらんだ。しかし蘇我赤兄に裏切られ、計画がばれて捕まってしまい、今護送されている。接頭辞ま・副詞幸く・無事である・ラ変あり未然形プラスば・もし幸いに命が無事であったならば)
またかへり見む(意志む終止形・またここに帰ってこれを見ようと思う)

        後撰集三〇八 

(格助詞の)体言に付いて、それが主語であることを示す

「吹くからに」の歌で有名な文屋康秀の息子が作者ですが、くわしいことはわかっていません。
白露に(草の葉の上について光っている白露に)
風の吹きしく(格助詞の主格ガ・~しく・頻く・シキリニ~スル・風がしきりに吹いている。)
秋の野は(秋の野の露は、水滴は風に吹き散らされている)
つらぬき止めぬ(四段つらぬく連用形プラス下二段止む未然形プラス打ち消し「ず」連体形・玉はヒモを通してつなぐものだが、そのヒモで貫き通していない)
玉ぞ散りける(係助詞ぞプラス四段散る連用形プラス詠嘆けり連体形・玉が散りこぼれているようだなあ)

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