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「ずは・くはの用法」を扱います。短歌を中心に用例を提示します。助詞の説明の最後です。古文単語 その57 ★新枕、あらでなく、足を絡め、手で締め付けて、よがりけり。なかうどが 婿に問ひて「気に入らずは 嫁を戻しやれ」と言ふ。 「 neokokugo というホームページ」に語彙を集約してあります。暇なとき、覗いてみてください。Googleで検索出来ます。

「ずは・くはの用法」を扱います。短歌を中心に用例を提示します。助詞の説明の最後です。古文単語 その57

★新枕、あらでなく、足を絡め、手で締め付けて、よがりけり。なかうどが 婿に問ひて「気に入らずは 嫁を戻しやれ」と言ふ。

「 neokokugo というホームページ」に語彙を集約してあります。暇なとき、覗いてみてください。Googleで検索出来ます。

○ けふ来ずは あすは雪とぞ 降りなまし 消えずはありとも 花と見ましや    

  古今集六三 

(ナカッタナラバ・ナイデ)ずは(ずば) 打消の助動詞「ず」の未然形(連用形という説もあり)に接続助詞「は」「ば」の古形)が付いたもの(係助詞という説もある)
仮想・将来のことについて言う。
(1)打ち消しの意の中止法または連用修飾「~しないで」「~するよりは」
(2)打ち消しの意の順接仮定条件「もし~しないならば」

これも伊勢物語に出てくる作品です。長い間、訪れなかった女性のもとに、業平が訪れた。そこで、女性が「毎年咲く花の方が、年に一度も来てくれるかどうか分からないあなたより、ずっと誠意がありますね」と言いました。そこで業平はその女性に対し、上の歌を贈ったのです。今日は覚えていてくれても、貴方は明日になれば私のことなど忘れて、別の男へ心を移してしまうだろう。歓迎してくれているようで、実はあなたの気持ちはつくりものにすぎず、雪のように冷たい心ではないのですか。
けふ来 ずは  あすは雪とぞ 降りなまし(四段降る連用形プラス完了ぬ未然形プラス反実仮想まし・たしかに、私が待たせたおかげで、桜は今日まで散らずに咲いていてくれました。もし今日私が訪ねて来なかったら、明日には雪となって降ってしまったでしょう。)

消えずはありとも 花と見ましや(もっとも、雪でないから消えずにあるとしても、散ってしまった花を人は美しい桜と見るでしょうか。)
長い間、訪れなかった女性のもとに、業平が訪れた。
そこで、女性が「毎年咲く花の方が、年に一度も来てくれるかどうか分からないあなたより、ずっと誠意がありますね」と言いました。
そこで業平はその女性に対し、右の歌を贈ったのです。今日は覚えていてくれても、貴方は明日になれば私のことなど忘れて、別の男へ心を移してしまうだろう。
歓迎してくれているようで、実はあなたの気持ちはつくりものにすぎず、雪のように冷たい心ではないのですか。

○ しるしなき ものを思はずは ひとつきの 濁れる酒を 飲むべくあるらし

      万葉集三三八
 ずは(シナイデ)
奥さんの死を前にした大伴旅人の作品です。
しるしなき ものを思はずは (験なし→考えても仕方が無い・甲斐のない物思い・四段思ふ未然形プラスずは・~シナイデ・イッソノコト・するぐらいなら・九州に来たことや妻がなくなったことや生きることはくよくよ考えても仕方がない)
ひとつきの(一杯の・杯(つき)飲食物を盛る器)
濁れる酒を飲むべくあるらし(四段濁る已然形プラス完了存続り連体形プラス酒・清酒の反対、酒糟(かす)の漉してない酒・四段飲む終止形プラス適当べし連用形プラスラ変あり連体形プラス推定らし終止形・一杯の濁り酒でも飲む方がましであるらしい)

○ 逢ふことの たえてしなくは なかなかに 人をも身をも 恨みざらまし

          拾遺集六七八

(形容詞連用形プラスは・仮定条件)
・形容詞本活用未然形+接続助詞「ば」(濁音が清音化して「は」になる)
・形容詞本活用連用形+係助詞「は」
教室によって二通りの説明があるようです。

かなりの肥満体の方だったようです。立ったり座ったりするのにも苦労したとの記述があります。医者に相談してお茶漬けのみを食べるようにしたのですが、いっこうに痩せなかったようです。藤原一族で中納言にまで昇進しています。
逢ふことの たえてしなくは(ク活用の形容詞プラス係助詞「は」→「なくは」となり、「…ないならば」という反実仮想を表す。「男女関係が絶対にないならば・もし恋人に会うことがまったくなかったならば」
なかなかに人をも身をも恨みざらまし(なかなか→ムシロ、カエッテ、ナマジッカ・上二段恨む未然形プラス打ち消し「ず」未然形プラス反実仮想まし・かえって逢ってくれない恋人の冷たさを恨んだり、思いを遂げられない自分の不幸を嘆き悩まずにすむだろうに)

○ 潮満てば 入りぬる いその草なれや 見らく少なく 恋ふらく多き  

       万葉集一三九四

○く語法


・用言の連体形の語尾に「あく」を付けて「~すること・するところ・するもの」という意味の名詞を作る
・言ふプラスあく→言はく・願はくは かけまくも(こころにかけて思うことも)など

大伴家持のおばさんで、旅人の妹です。額田王以後における最大の女性歌人とされ万葉集に多くの作品を残しました。大伴の氏族の巫女的な存在として、そして家持のおかあさん代りとして、大伴氏を支えたと言われています。
潮満てば(四段満つ已然形プラスば)
入りぬる いその草なれや(上一段入る連用形プラス完了ぬ連体形・草なれや→なればにやあらむ→断定なり已然形プラスば・にやあらむ→断定なり連用形プラス係助詞や疑問プラスラ変あり未然形プラス推量む連体形・潮が満ちると水の中に入ってしまう、磯の海草であるからだろうか。)
見ら く 少なく 恋ふら く 多き(見るプラスあく・恋ふるプラスあく・逢うことはほんの少しで、恋しく想っていることの方が多いことよ。)

○ わが里に 大雪降れり 大原の ふりにし里に 降らまくはのち


       万葉集一〇三

天武天皇の作品です。相手はむろん皇后(のちの持統天皇)です。
わが里に 大雪降れり(天武天皇のいた明日香浄御原・四段降る已然形プラス完了存続り終止形・私のいる飛鳥の里にはいま大雪が降っている。)
大原の ふりにし里に 降らまくはのち(藤原氏の娘である妻のいる大原・現在の明日香村小原・上二段古る(ふるびる)連用形プラス完了ぬ連用形プラス過去き連体形→古びてしまった・四段降る未然形プラス推量む未然形プラスあく・君のいる大原の古びた里に降るのはもっとあとだろう)

○ み吉野の 山の嵐の 寒けくに はたやこよひも わが一人寝む 


      万葉集七四

この歌も文武天皇です。
み吉野の 山の嵐の 寒けくに(山の嵐・山から吹きおりる風・形容詞寒し連体形さむきプラスあく→寒けく・寒いこと・吉野の山の嵐は寒いのに、)
はたやこよひも わが一人寝む(はたや・モシカシタラ・下二段寝(ぬ)未然形プラス推量む連体形・やの結び・もしかして今夜も、独りで寝るのだろうか)。

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