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CA歴35年で1番忘れられないお客様【モロッコ線】

こんにちは!

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私が中東でCAをしていた時、フライト歴35年という超ベテランパーサーとご一緒しました。

今日は、そのベテランパーサーから聞いた【一番感動したフライト】を紹介します。

私がCA時代、超ベテランの男性パーサーと、一緒にフライトをしました。

彼はヨルダン人。

彼の客室乗務員としての、乗務歴は35年以上!!

ブリーフィングでの自己紹介も

「Hi everyone! I'm dinosaur Pursure ○○」

「ハイ!皆さん、私は恐竜パーサーの○○です」と、古株であることをジョークにしていました。

ご一緒したフライトは、ロングフライト。ドバイから南米のどこかの国へのフライトだったと思います。

超ロングフライトだったので、恐竜パーサーと、ゆっくりお話させてもらう時間がありました。

私は、彼の35年の中での「ベストフライト」を聞きました。

彼の言葉を、思い出して書きますね↓

CA歴35年間での「1番忘れられないお客様」

それは、モロッコのカサブランカ国際空港から、ドバイ国際空港に向かうフライトでの出来事。

ドバイに向かう大型機に、6歳女の子が1人で乗ってきた。

※子供が1人で国際線の飛行機に乗ってくる事は、よくある話。
私達が働いてきたエミレーツ航空では、1人で旅する子供のお客様をUMと呼んでいました。
UMとは、unaccompanied minorsの略で、同行者の居ない子供(5歳~12歳までのお客様)の意味。

客室乗務員達は、いつも通り、地上スタッフから、その少女を引き継ぎ、飛行機は、ドバイに向け離陸。


食事のサービスも、その子はもりもり食べ、全ては順調。

食後には、客室の灯りを暗く落として、その女の子も他のお客様も眠って居た。

CA達は、順番に客席の様子や、そのUMの子供のお客様の様子を見にいく仕事があるから、
エコノミークラス担当の、アフリカ人のCAが、その女の子を見に行くと、席には誰も居なかった・・・。

CA達が心配して女の子を探すと・・女の子は1人トイレにいた。

飛行機のトイレで1人泣いていた女の子

CAが、トイレのドアを開けると、

なんと、女の子は泣いていた。。。しかも、服を脱いで肌着姿で泣いていた。

6歳の少女の手には、ビショビショに濡れた女の子の服。

女の子は、トイレで泣きながら、自分の服を脱いで洗っていた。

CA達はびっくりして、女の子を毛布でくるんで、ギャレーに連れて行ったの。

そして、CA達が、事情を聞くと女の子はこう答えた。

「ドバイで働いてるママとパパに会いに行くの。
これはママが送ってくれたドレスなの。
ジュースをこぼして汚れちゃった。だから自分で洗ってたの」

泣ける。。。パーサーから聞いた時も泣けたけど、今書いてても泣ける

女の子の両親は、ドバイに出稼ぎに出ていた。

女の子は両親のもとに行くために、一人で飛行機に乗っていた。

ドバイには、母国に子供を置いて、出稼ぎに行く母親が沢山いた。アフリカやフィリピンに子供を残して、中東に出稼ぎに来てる女性は珍しく無かった。1年~2年に一回、子供に会いに帰っていた。

女の子のお母さんは、ドバイに出稼ぎに行っていた。
着ていたドレスは、お母さんが送ってくれたドレスだったそう。

そのドレスにジュースをこぼしてしまい、パニックになっていたの。

女の子はトイレに行き、ドレスを脱いで、泣きながら自分でドレスを洗っていたんだ。

私が悲しい顔をして聞いていると、ベテラン恐竜パーサーが、
「it's not sad story」と言って、ウィンクしてきた。

少女のため、上空で全力を出したCA達

そんな話を聞かされたCA達は、あの手この手で女の子を励ましていた。

別のCA達は、一生懸命に、ドレスのシミ抜き作業。

それでも、肝心なドレスのシミは、なかなか取れません。

そもそも、モロッコ線て忙しいし、そんなに時間もない。。。

CA達が、諦めかけた時、パーサーが別のプランを思いつきました。

パーサー「ちょっとそのドレスをかして!」

パーサーは汚れたドレスをもって、ファーストクラスに戻っていった。

しかし、、、、

ドレスは、キレイになることはなく、飛行機はドバイに着陸してしまった。

ドバイ着陸後、女の子に起きた奇跡

着陸後、エコノミークラスのCAに、ファーストクラスに居るパーサーから連絡が入った。

「女の子をファーストクラスに連れてきて」

エコノミークラスのCAが、女の子を毛布で包んで、ファーストクラスに連れて行った。

パーサーは女の子に、

「please have seat ,princess^^(お姫さま、座ってください)」

と言って、女の子を、ファーストクラスの座席に座らせた。

そして、何かを大切そうに両手に持ってやってきた。

パーサーが膝をついて女の子に差し出したのは、、、、

なんと、

女の子が着てきたドレス!!!

しかも、新品のピカピカのドレス!


女の子は喜んで、大はしゃぎ。

どれだけ洗っても、綺麗にならなかったドレスが、ピカピカの新品になって戻ってきたから。

これで、ママが買ってくれたのと同じドレスで会える!そんな表情に見えた。

CAが女の子の着替えを手伝い、女の子は新しいドレスに着替えた。

「Ta-dah!!!ジャーン」と言いながら、ドレス姿の女の子を、クルー達に見せると、みんなで大喝采!

外人クルー達が「ピー!」とか「フォー」とかの、お祝いの声を出して、盛り上げてた場面が目に浮かびます。CA達も、パーサーの行動を見て、感動したに違いないです。

私はジーンとくると同時に、

「どうやって全く同じドレスを手に入れたのか?」が気になりました・・・

空と地上スタッフの奇跡の連携プレー

「どうやって、上空からドレスを用意できたの?」

それを聞くと、

パーサーはこう答えました。

「we have  a special support team」

(スペシャルサポートチームにお願いしたの)

私は、その存在を良く知らなかった。
機内で特別な出来事があった時、地上のサポートスタッフに連絡して、頼み事ができるとか。パーサーは、長年会社に居るから、そこに友人がいたと。

上空で、パーサーは、女の子のドレスが綺麗になることは無いと判断。
ドレスは、タグを見ると、中東ではどこのモールでも売っているブランドの子供服だった。
さらに、ドバイ到着までの、飛行時間は十分にあった。

「地上のスタッフに頼めば、用意してもらうのは難しくないはず・・・。」そう思って、地上のスタッフに連絡をとったらしい。

パーサーは、地上のスタッフに、

女の子が、両親に1人で会いに行くこと。

そのドレスがママからのプレゼントであること。

同じドレスで、ママと再会させてあげたい。

と、頼んだと話してくれた。

航空業界には、

こういう子供の事情を聞くと、

とんでもなく頑張るスタッフがいます^^

地上のサポートチームは、パーサーから送られてきた情報を元に、ショップにお問い合わせ。

幸いにもドレスがあったので、モールに行ってドレスをゲット!

私の中では、パーサーと地上スタッフの優しさも奇跡。。。w

地上のスペシャルサポートチームは、ドレスを持って飛行機に向かいました。

そして、ドレスはパーサーに手渡されたんです。

女の子は新しいドレスをきて、グランドスタッフさんと飛行機を降りていったそうです。

最後に


この話は、私が本人から聞いた実話ですが、他のパーサーが同じことができたかと言うと、難しいと思います。^^:

当然、過去の私の様な新米CAには不可能な話です。

35年も会社に勤め、機長や地上スタッフさんにコネクションがあったから、実現した話だと思います。

35年フライトしたパーサーの「ベストフライト」です。

「最後、喜んでいた女の子の顔が忘れられない」と言っていたパーサーの満足そうな優しい表情を今でも覚えています。

35年もエミレーツでフライトしてると、きっと、これ以外にも様々なドラマを経験してるはず。もっと沢山聞きたかったなと思っています。
中東のエアラインでは、日本では考えられないブッ飛びエピソードの連続だったので。

今でもはっきり覚えてる数字で、
CA資格更新の時、「昨年度は、14人の赤ちゃんが弊社の機内で生まれ、27人のお客様が機内で亡くなりました。少なくとも、毎月1人の命が生まれ、おお二人お亡くなりになった計算です」と聞かされました。

「ええええええええ、毎月生まれて、毎月急病人がお亡くなりになってる。涙」と、腰を抜かしたのを覚えています。

上空のギャレーで、自分の腕の中でお客様を看取ったパーサーにも、私はあった事があります。。。

と、語り出したらキリがないですね。

今回は、私がお会いしたベテランパーサーの忘れられないフライトを紹介しました。

最後まで読んで下さってありがとうございました。


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