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リクルート社のサクラ行為をどう考える?見えてくる2つの問題点

6月1日より、新卒採用の選考解禁となり、多くの企業で内々定出しのラッシュとなっています。そんな中、リクルート社に関するニュースが飛び込んできました。本日は、こちらについて考察してみたいと思います。企業人事の方、学生の方も、社会人で転職活動をされる方も、ぜひ参考にして下さい。

世間を騒がせているリクルート社の「サクラ」問題とは

リクルートは新卒採用、中途採用問わず、人と企業を結び付けるマッチングビジネスを生業としており、日本最大手の人材ビジネス企業です。リクルートが運営している、学生向けオンライン就活セミナーで、リクルートの社員が学生のふりをしてチャットで事前に準備していた質問を投げかけていたことが分かりました。

質問の例としては「インターンシップには何社くらい参加すればいいのか」「イベントは私服で参加してもいいのか」といった内容です。学生が質問しやすい雰囲気づくりのため、予め質問を用意し、学生役の社員がチャットに書き込んでいたということです。
これについて、リクルート社は謝罪をしました。

https://job.rikunabi.com/2024/media/dl/rikunabi/announcement.pdf

質問を出しにくい空気払拭?「事前質問を準備すること」の何が問題だったのか

運営の誠実性

今回、舞台となったのはオンラインセミナーです。コロナ以降、学生のセミナーもオンライン化が進み、今では当たり前のように日々開催されています。オンラインでは、参加者氏名とその実態が同じであるという前提の元、ある種の性善説に沿ってプログラムが進んでいきます。物理的には可能であっても、学生になりすました社員がいる、本当は社員ではない人が混じっている、ということは想定しません。暗黙の了解で運営されているルールを破り、学生に不誠実な行動をとったことが問題です。

また、社内のコミュニケーションとして「サクラ」という言葉を使い、学生の参加数を偽装するような表現がなされており、違和感を覚えた人が多かったのではないでしょうか。
数年前、まだイベントが対面だった頃、都の公費事業で、学生をアルバイトで雇い、サクラとして会社説明会に参加してもらうという問題がありましたが、私はそれを想起しました。
一部には、「動物園」という言葉で大学や学生を表現していたという報道もあり、集まってくれた学生を揶揄するような言葉を不快に思う人がいたのだと思います。


もう1つの問題「コーポレートガバナンス」

本件は、内部告発により、teamsのチャットが流出しました。過去、リクルート社は2019年に、「リクナビ」で学生の内定辞退率を予測したデータを本人同意なしに予測し、企業へ有償で提供していたという不祥事がありました。当時はデータドリブン経営が話題で、HR×テクノロジーが注目され、ピープルアナリティクスが流行し始めた頃でした。新しいものに敏感なリクルートだからこそ、時流に乗りながら見落とされてしまったのかもしれません。その結果、シェアNo1を続けてきた「リクナビ」は他社へ首位の座を渡し、不祥事に対する大きな代償を払いました。

そこから大きくコーポレートガバナンスを強化し、2021年、今まで完全子会社として経営をしていた7社を吸収し、各社へのガバナンスの目が届きやすい体制に刷新しています。過去の経験から、強いガバナンス体制を敷いていた中にも関わらず、今回のようなteams上のコミュニケーションのやり取りには、監視の目が行き届かなかったこと、内部の相談窓口で気付くことができなかったこと、が問題です。

個社の問題ではない、業界を俯瞰して見えてくること

採用に対するマインドセット

私たちは日々、採用活動の中で、多くの学生と接しています。言葉というのは、その奥にある考え方や姿勢の表れです。学生を選ぶ立場(実際には大手企業であっても学生が企業を選ぶ時代です)の強さに甘んじて、上から下への目線になってしまったり、相手の時間をもらうことや、手間を掛けさせることを当たり前のように思っていないでしょうか。
キャリア採用においても個人と企業は対等であり、個人のキャリアオーナーシップはますます大きくなっていくはずです。学生や応募者を自社の論理でコントロールするのではなく、強いwillを持っている方に選んでもらうためにどうするかを議論し施策立案をすべきだと思います。

今一度、社内用語の点検を

今回は、teamsのチャットが流出することで、社内で当たり前のように使っていた言葉が表出し、世間に意図しない誤解も与えてしまいました。採用の文脈ですと、例えばジェンダー平等に注力されている企業も多いと思いますが、その時に社内で女性に対する失礼な表現やワードを使っていないでしょうか。ミドルシニアの活用を考えた時に、年齢を重ねた社員が傷つくような表現をしていませんか。想定よりも年齢が高い方が応募してきた時に、ふさわしくない表現でメモしていませんか。私自身も過去に、エージェントのフィードバック(企業の評価コメントがそのまま戻されました)でかなり傷ついた経験があります。事実だったかもしれないけれど、そんな言い方しなくても、と。外部の方が見た時に、誤解を生まない、正しく伝わる言葉であるように、今一度、点検をしてみてほしいです。

Happiness insight HP

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