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人事部にも生成AIによる革新が!【PeopleGPT】の登場は日本の採用活動をどう変えるか?

Chat-GPTがますます普及していく中で、生成AIと人事の関わり方にも注目が集まっています。本記事では、生成AIが人事に活かされる具体的な事例や、その導入によって変わる採用活動の将来像について詳しく解説します。人事責任者や担当者の方はもちろん、就職活動中の方も必見です。

リリース後、急拡大の「Chat-GPT」の勢い

米国のスタートアップであるOpenAI社が開発した自然言語処理の人工知能(AI)を搭載したChat-GPT。2022年の公開以降、SNSには連日数多くの『使ってみた』投稿が溢れています。その性能の高さや、利便性を受け、2023年4月3日、東京大学は学生向けにいち早く生成AIの利用方針を発表しました。

日本のスタートアップも自社サービスにAPI連携でChat-GPTを搭載し、新しいサービス展開をする企業が数多く出てきています。一方で、ユーザー側も大和証券や伊藤忠商事は、業務でChat-GPTを使用することを認め、資料作成、海外資料の翻訳、アイデア発想や業務効率向上などに活かしていく方針です。


人事業務に大きなインパクトを与える可能性「PeopleGPT」とは

人事部門は、膨大な人事データを保有しており、また、処理すべき定型業務も多いことから、本来はデジタル化を推進すべき部署です。その一方で、個人情報を取り扱っている、採用、育成、人事制度と、機能別に異なる人事管理システムが導入されている、慣習としてデータを残しているがルールがないといった事情から、デジタル化が遅れている傾向にありました。
しかし、今こそ人事も、技術を使う側に回って、仕事のレベルを向上させていくべきだと思います。私自身は、ダイレクトリクルーティングに強みを持っておりますが、「PeopleGPT」ではリンクトインやGitHubなどオープンなデータベースにある候補者の履歴書情報から、自社の求める人材を抽出し、最適なスカウトメールを書いてくれます。まさに普段私がやっている仕事が自動化されるわけです。

これまでの採用活動

企業は本当に採用したい人物にたどり着くまで数多くアプローチする

従来までの採用活動は、就職活動をする個人と採用したい企業が、それぞれに情報を持ち、合致すればマッチングされる仕組みでした。(これを情報の非対称性と言います)個人から探すための求人媒体やエージェントがあり、その一方で企業側からも求人サイトやビズリーチなどのデータベースを使って就職潜在層を探していました。その数は1つの求人に対して数百通に上ることもあります。

生成A Iが変革するこれからの採用活動

企業は最短ルートで求める人材にアプローチできる

これからは、技術を使うことで、極めて効率的に、求めるスキルや経験を持つ人材に接触が可能になります。また、求職者側も今後はChatGPTを活用してエントリーシートや職務経歴書を作成することになるでしょう。企業の公開情報からふさわしい内容で志望動機が作成され、短時間で作成することができるようになります。これにより、企業も個人も、より多くの候補の中から、よりスピーディにマッチングが可能になります。

米国の事例(Juicebox社)

米国のスタートアップ、Juicebox社がリリースした「PeopleGPT」。「このテクノロジーを使えば、何百枚もの履歴書に目を通すことなく、必要なスキルを正確に特定することができる」と説明されています。動画の中では、必要なスキルを入れると、対象者が検索され、さらに適切なスカウトメールまで作成をしてくれます。

Juicebox社CEO、David Paffenholz氏が、リンクトインで投稿したこちらの内容に対し、コメント欄には「私のデータでAIをトレーニングしましたか?その場合は、削除してほしいです。LinkedInでクローラーを実行することに同意していません」というリアクションがありました。それに対しては、「あなたのデータを使用して AI モデルをトレーニングしたわけではありません。私たちが使用するすべてのAIモデルは、OpenAIによって開発およびトレーニングされています。これらのモデルは、準拠したソースを介して取得したコンテキスト情報を提供することで使用します。」と回答されていました。この問題は、日本においても活用する上での壁になると思われます。

推奨されたプロンプトを入れてみたところ、条件にフィットする人が表示された。
「リモートワークのリーダー」「航空宇宙産業経験者」といった絞り込みも可能。

日本での活用事例(サイダス社)

日本の人事領域へのサービスとして、サイダス社は、労務対応窓口を自動化するサービスを提供しています。こちらは「PEOPLE-GPT」という名称です。人事担当者は日々、従業員から様々な問合せを受けますが、人事担当者の回答工数をさらに削減すべく、「ChatGPT」の技術を応用し、FAQの掲載内容や日々人事に問い合わせたフォームデータを利用して回答を行うサービスを開発し、いち早く人事領域へリリースをしています。
社会保険や出勤簿など、労務関連の質問は、従業員側も早く正しく回答が欲しいものです。Chat機能でリアルタイムに回答がもらえる仕組みは、従業員の時間を奪うことなく、親切なものだと思います。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000073.000016507.html

これからの人事部門に求められることとは

採用、労務、育成、それぞれの部門でテクノロジーが導入されると、より多くの定型業務が自動化されます。Jesuthasan and Boudreauの論文によると、人と機械の最適な組み合わせを実現するために、次の4つのステップを実行する必要があります。

1. 既存の仕事をキータスクに分解し、分類する。

2. 各タスクの価値を測定する。
 自動化のパフォーマンスと戦略的価値の関係を推定する。

3. 自動化の選択肢を特定する。
 各タスクを実行できるさまざまなタイプのAIやロボティクスを検討する。

4. 人間と自動化された仕事を最適に組み合わせることで、仕事を創造する。
人間の仕事は、自動化によって代替、補強、変革されるべき。

(Jesuthasan and Boudreau,"Reinventing Jobs: A 4-step Approach for Applying Automation to Work",HBR Press, 2018を翻訳)

従来までは、1と2の途中までを行い、以降はシステム部門や外部に依頼していたのではないかと思います。これからの人事リーダーは、担当者の領域内で、1~4を完結することが求められます。今までよりも、1つ1つの業務を戦略人事や経営全体の枠組みの中で捉えていく必要があり、デジタル化や自動化に関する知識を持つことも必要です。そして、自動化された仕事を活用しながら、戦略人事領域の仕事をするべきだと思います。経営の方向性を実現するために、人事の立場から、採用、育成、評価などの人事戦略を立案し実現していくのが戦略人事です。今ホットな話題である、人的資本経営の一丁目一番地である「経営戦略と人事戦略の連動」。人事側で経営戦略を紐解いて、アジェンダを出しながら、議論していく必要がありますが、このように多くの部門を巻き込んで、経営と同じ目線で仕事をすることは、これからの人事パーソンならではの役割だと思います。
そして、変革が起きる時には、リーダーシップの在り方も変わります。テクノロジーを使いこなし新しい価値を生み出せるリーダーが必要です。

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