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小林幸子の歌う”脳漿炸裂バーサン”を語る

今から5年前。
夕食を終え、片付けも済んだ私はソファーでスマホを見ながら寛いでいた。

 ーーーピコン!

ニコニコ動画からきたプッシュ通知を何気なく開く。

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ええええええええええええ!!!!!!

”脳漿炸裂バーサン?!!!!”

【小林幸子とSachiko】脳漿炸裂バーサン 歌ってみたは、小林幸子の7曲にあたるボカロ曲カバー作品である。

VOCALOID(ボーカロイド)とは、ヤマハが開発した音声合成技術、及びその応用製品の総称である[1]。略称としてボカロという呼び方も用いられる。メロディーと歌詞を入力することでサンプリングされた人の声を元にした歌声を合成することができる。ーーーVOCALOID(ボーカロイド)ーWikipediaより

ニコニコ動画で2015年8月8日 20:30に投稿され(おそらくババァの日、バーサン時間)、10月1日現在で255万以上再生され、コメント数は約7万という数字をたたき出している。
YouTubeの小林幸子のさっちゃんねるには今年の7月10日に投稿された。

(この絵面の圧力ったらない)

原曲はボカロPのれるりり(当社比P)さんの”脳漿炸裂ガール”
こちらは2012年10月に投稿され、現在830万再生、コメント数約20万の早口歌唱が特徴的な動画。2013年にはノベライズ化、2015年には映画化もされた大人気ボカロ曲だ。
バーサンバージョンと併せて本家様を聴くことをお勧めしたい。その方がきっと楽しめますから。

今日はこちらの“脳漿炸裂バーサン”について語り散らかしていきたいと思いまっす!!

1.驚異の滑舌

それにしてももの凄いタイトルだ。
脳漿が炸裂してそんでもってバーサンなんだから。だれだ幸子さまにバーサンなんて歌わせたやつはいいぞもっとやれ!

この曲はなんと言っても早い。歌詞が矢継ぎ早で息つく間もないほど!こう言った早い曲がボカロシーンで流行った時期があるそうだが、ボカロだからこそ、こういう曲が作れたんじゃないかと思う。人が歌うんだったら作らないよねきっと。

でも小林幸子は歌いこなしている。びっくりするほどの滑舌の良さで。

Lemonのときにも書いたが言葉がとてつもなく明瞭で耳に飛び込んでくる。日本語を50年歌い続けているというのはこういうことなのか?!

実はクラシック、ベルカントと呼ばれる歌い方で日本語を歌うのは難しい。常に上へ上へと意識をしていないと歌声の響きをマスケラ(顔の目の周りの部分)に保っていられない。顎が固くなり、喉にも力が入る。
どうやら日本語というのは歌っている(喋っている)と口の中の空間がへらべったくなるようだ。ここがイタリア語と真逆なのだ。イタリア語は自然と口の中の空間が開く。それは喉に力が入りにくく、マスケラに響きを集めることを容易にするし、からだ全体を共鳴させるのにとっても都合がいい。
日本語の歌を練習するたびに、あぁベルカントっていうのはイタリア語を美しく歌うために生まれた歌い方なんだなぁと実感する。

そんなことを思いながら日本の演歌・民謡・歌謡曲。
こぶしを回したり、喉をに力を入れたり緩めたり、やっていることはベルカントと真逆である。きっとそれが日本語に一番合っている歌い方なんだと思う。口の中の空間が狭い日本語は喉に力が入りやすい。ゆえに喉を操作して歌う歌い方が発展したのではないか。
私は修行が足りず日本語を歌うとやっぱり発音が甘くなってしまう。
日本語を50年歌いつづけ、その日本語を誰より美しく歌い上げる小林幸子には畏敬の念を抱かざるを得ない。

ちなみにこの曲は自身のVOCALOD Sachikoと一緒に歌っている。Sachikoの調声も素晴らしく生身の人間のようだが、でも皆さん思いませんか?機械より本人の方が滑らかで滑舌が良いと。

小林幸子は機械をも超える歌唱力を持っているのだ。

2.永遠の命を手に入れた小林幸子

VOCALOD Sachikoは2015年に発売された。

『私、初音ミクちゃんになるんですか?!』

小林幸子は言っていた。以下はその時のインタビューである。

そしてこの“Sachiko“が小林幸子そっくりなの!本人が声を提供してるから当たり前と思われるかも知れないが、しゃくりや発音やビブラートなどの歌い方がそっくりなのだ。デモ動画もあるのでぜひご覧いただきたい。

これって凄いことと思いませんか。
究極、小林幸子が死んでも、小林幸子の新曲が出せる訳ですよ。このボーカロイドを操れば。

面白そうなことはなんでもまずやってみる。やってみてダメだったらやめればいいんだもの。

人は年をとるごとに硬くなり変化を恐れるようになる生き物だと思う。それがどうだこの柔軟な姿勢、バイタリティ、いつもまでも見習いたい。

思い込みを捨て、思いつきを拾う

結果、我らがラスボスは永遠の命を手に入れた。
もう向かうところ敵なし無敵だ。すげぇな小林幸子。

3.全力のネタ

ボカロ曲を歌いこなす小林幸子歌唱力について語ってきたが、この話もしないといけないと思う。

もう、全力で笑わしにきてるだろ?

歌唱力でもう素晴らしいカバーになるんだからそれだけでもいいのに、毎回めっちゃくちゃネタを仕込んでくるのが小林幸子のお約束なのだ。もうほんと究極のエンターテイナー!最高の下世話!!
この曲のネタオンパレード!原曲から絶妙に変えてバーサン仕様にしている。下記にポイントをまとめる。視聴の際のお供にして欲しい。

・0:00~冒頭のセリフ え?17歳?
・0:30~マカロンじゃなくて?!
・0:47~携帯電話じゃなくて、ショルダーフォン…?
・1:00~はいキタバーサン!
・1:16~黒電話で渾身の・・・!!
・1:57~やっぱりようかんなのかよ!
・2:11~二次会の行く先もバーサン仕様てかそんな言いきらなくても
・2:27~またキタバーサン!(生年つき)
・2:28~今世紀最強のイケボ
・随所にでてくるショルダーフォンと黒電話
・ラストはそれでしめるんかいっ!

どうだこの数!息つく間もないネタの応酬(物理的にもブレスできない)
ちなみに私は脳漿炸裂バーサンの登場場面が好きです。

4.終わりに

このnoteを書くために久しぶりに脳漿炸裂バーサンを聴き込んだのだが、やっぱいい。聴けば聴くほど小林幸子の魅力が溢れ出てくる。何度でも聴きたい。するめみたい。噛めば噛むほど味が出るあいつ。くコ:ミ くコ:ミ

あ!!!歌い方好きなところ書き忘れた!今から書いていいですか?!

・あぁペラペラな御託並べちゃって~と口数が少なくなるところの開けた歌い方。
 →このあぁの開放感がくせになる。
・そう仰せにてはそうらえども~の喉を詰めたような歌い方
 →なんか…とってもキュートに感じる。
・サビの『さぁさぁ』の頭空っぽみたいに突き抜ける裏声の響き
 →『狂ったようにおどりましょう』へ続くのも納得の突き抜け感。何度でも聴きたい。なんなら語尾のましょうも媚びてる感じ(そんなつもり無いかもしれない)が好き。
・『死んじゃってんだから(ワイヤイ)』
 →サビぜんぶすきだなこりゃ。
・『月の向こうまでイっちゃって』のイっちゃっての音の乗せ方
 →
この『イ』の発音の仕方がツボ!私も月の向こうまでイける気がする。
・二次会お蕎麦屋浅草ッ!の言いきり方
・ラストのこぶし

・・・どうしよう、全然終わりにじゃない!

こういった声音の引き出しもたくさん持っていて、随所で使い分けられるのもマジ畏敬。

ベルカントはそれぞれの母音をレガートでつなげることと、いかにその全体の音色を揃えるかに注力する。正直、こんなに色々な声を出せない。ささやき声でとか難しくて歌えない。

脳漿炸裂バーサンでは演歌とは違う歌い方をしていて、最後に力を開放していつものそれをぶっこんでくるのも秀逸だ。やっぱり引き出しの数が全然違う。50年歌ってきたという事実の重み。それをひしひしと感じている。

今回は今までで一番散らかってしまった気がする。

追いかける背中はやはり遙かに遠い。


また幸子さまのコンサートへ行ける日が早く来ますように。

今日も幸子さまが歌ってくださることに感謝を。

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