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限界と思い込みの心理学

 ロジャー・バニスターというイギリスの陸上選手を知ってる方は、たいへんまれでしょう。たぶん陸上競技をされてる方であっても、知ってる人が少ないと思います。しかしこの人、心理学の世界ではちょっとした有名人なんです。


 その昔、イギリスの陸上競技には1マイル走という種目がありました。その名の通り、1マイルを走る速さを競う競技です。1マイルとは、だいたい1.61kmくらいですね。


 この競技では長らく「4分の壁」という言葉が信じられてきました。人間の体の構造上、どんなにがんばっても4分以内に1マイルを走ることはできない、という学説です。だれがなぜそんなことを言いだしたのかは知りませんが、とにかく1マイル走では4分を切るタイムは出ないと信じられてきたのです。


 ところが1950年代、この説に疑いを持った選手が現れました。彼の名こそがロジャー・バニスター。ロジャーは陸上選手でありながら医学生であったので、医学の知識を総動員してトレーニングに励み、なんとついに1マイル走で3分59秒という記録を叩き出したのでした。不可能と言われてきた4分の壁を破ったのです。


 不可能を可能にしたわけですから、ロジャーの名前は永遠にイギリス陸上界に刻まれた...と思いきや、この記録は別の選手に抜かれてしまいます。それもロジャーが新記録を達成した、たった46日後でした。

 しかし驚くことはまだ起きました。ロジャー・バニスターが4分の壁を破ったあと、1年のあいだに、なんと23人もの選手が彼の記録を追い抜いたのです。不可能を可能にしたのに、ロジャーの記録はたった1年で24位に落ちてしまったのです。


 長いあいだ不可能だと思われていた4分の壁を一人が破ると、あとは次々に新記録達成者が現れた。この現象を心理学では「ロジャーバニスター効果」と呼んでいます。要するにこれは、不可能と思っていたから不可能なままだっただけで、可能であることが証明されたらみんなが可能にしてしまう、という現象です。つまり不可能も可能も単なる人間の思い込みだったわけですね。人間の体の構造がどうとかはまったく関係なかったんです。


 そういえばぼくが子供のころ、野球のピッチャーは160kmのボールは投げれない、なんて言われていました。それこそ人間の体の構造上、160kmの球速は出せないと信じられていたんです。ところが今はどうでしょう。大谷翔平選手や佐々木朗希投手、藤浪晋太郎投手なんかがバンバン160kmのボールを投げているし、もうそれに誰も驚かなくなりました。


 そう思うと、やっぱり人間の限界って物理的な問題よりも、まず心理的な問題のほうが大きいんだと思います。早い話が、思い込みが限界を作ってるわけです。


 さて、あなたの思い込みは自分自身にどんな限界を作り出していますか?

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