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スピードと丁寧さは、どちらを大切にしたら良いですか?と聞かれたら

4月に入社した社員は順調に仕事を覚え、ひとりで対応できることも増えてきました。
この時期の新入社員からほぼ必ず聞かれるのが「スピードと丁寧さはどちらを大切にしたらいいですか?」という質問です。
これは質問のかたちをとっていますが、2つの意味を込めた意思表示であることが大半です。

1つ目は
ほかの先輩たちのように時間内で仕事を終わらせることができない。ワタシってダメ社員かもしれない。
2つ目は
先輩たちは時間内に仕事を終わらせているけど、ワタシは利用者さんの話をじっくり聞いて、丁寧に対応しているから時間がかかるだけ。ワタシの方が良いケアをしている。

真逆の意思に見えますが、共通点があります。
どちらも「ワタシを認めてほしい」です。

1に対して新入社員が期待する回答は
「新人なのだから仕方ない。あなたはがんばってる」
2に対して期待する回答は
「ゆっくりでもいい。あなたはがんばってる」

信頼関係ができる前の新入社員とマネジャーなら、この答えで大丈夫です。
ただ、入社して3ヶ月経過している今なら、もう信頼関係は築けていることでしょう。
その場合、この答えでは30点。

信頼関係ができる前には、まず前提となる信頼関係を結ぶことが最優先事項なので、承認によって信頼関係を深めることに意味があります。
しかし、すでに信頼関係があるのなら、次は新入社員の成長を促すアプローチが必要です。

承認アプローチの本当の目的は「こと」ではなく「ひと」を承認することです。
つまり「新入社員のがんばり」を認めることで、その新入社員がチームの一員として貢献してくれていることを承認します。
スピードやケアの質などの「こと」にはアプローチしていません。

では、信頼関係ができている社員にはどう返答したらいいのでしょうか?

「スピードと丁寧さはどちらを大切にしたらいいですか?」
という質問に対して、僕ならば質問で返します。

「誰かにスピードが遅いと注意されましたか?」
「なにか不安なことがあるのですか?」
と聞いて、質問をしたキッカケを探ります
ちなみに、早すぎて悩んでいる人は、ほぼ100%いません。

もし、先輩に“もっと早く”と注意されたことがキッカケだったとしましょう。
先ほども書いたように、この場合に相手がほしいのは「ゆっくりでもいいですよ。丁寧にがんばっているのですね」という承認です。
この返答をすれば、相手は満足ですが、成長のチャンスを逃す可能性があります。

マネジャーにとって社員育成は重大なミッションです。
相手に気に入られることを優先して成長の芽を摘むことは、マネジャーとしは不十分です。

では、先輩に注意された新入社員にはどう返したらいいのでしょう。

ここで次の質問を投げかけます。
───「先輩はどうして“もっと早く”と言ったのですか?(言ったと思いますか?)」
この質問で、指導した側の意図を考えさせます。
ここが今日のポイントです。
新入社員が成長するには、指導の目的に気づくことが必要なのです。

「私の仕事が遅いと、他の社員に迷惑がかかるから」
───ほかの社員に迷惑がかかるとどうなりますか?
「他の利用者さんを待たせてしまいます」
───先輩がどういう意味で指導したのか分かりましたね。あなたを責めるつもりではなく、あなたと同じように利用者さんを守りたいから指導したのですね。

似た質問で、「スピードと質どちらを先に習得したらいいですか」と聞かれることがあります。その場合の答えは明確です。
質です。
スピードは熟練度を上げれば身につきますが、質(基本動作)に関しては、一度習得するとそのレベルが基準となってしまいます。
ゆっくりでも正しい型を身につけてから、スピードを上げていくのが原則です。

人材育成を念頭においた答え方を身につけて、社員を伸ばすマネジャーになりましょう。


めでたしめでたし

立崎直樹

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