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『Re:CARE』 リスクと向き合う

管理者や経営者が単に「リスクを避けよ!」という姿勢だと、介護職もそれに習って、根こそぎリスクの種潰しにやっきになります。(中略)本当のリスクに正面から目を向けない介護職は存在意義を失い、やがて警備会社やAI,ロボットに代わられてしまうでしょう。(高瀬比左子さん)

介護の目的はリスクを避けることではありません

もし、生きる目標が「絶対に転倒しない」なら、二足歩行をやめるしかありません。転倒して、怪我をして、痛い思いをするのは誰も望んでいません。

それでも僕たちが二足歩行で生活するのは、「自由にしあわせに生きたいから」です。

僕を含め日常的に二足歩行している人は、転ぶリスクよりも、自由な生活ができないリスクを避けたいと、無意識に判断しているのです。


介護は、しあわせであるための支えです。

日常生活はリスクに溢れており、しあわせであるためにリスクは必要です

「リスクゼロを目指すなら、介護ではなく警備」という部分にハッとしました。


「日常生活上のリスクは当然ある」ということを家族に伝えておく必要があります。事前にきちんと説明をしていれば、家族も無茶な要求はしてこないはずです。お互いにトラブルを回避しようという心理が働いて、「リスク」に過敏になっているのではないでしょうか。私は、入居後の健康状態について相談を受けた時、「リスクゼロはあり得ません」ということを伝えています。例えば、「誤嚥をしないように口から食べない選択をしたら、嚥下機能が弱って死期が早まる可能性があります」(中略)と具体的に説明して、それでもよいかどうかを考えていただいています。 (佐々木淳さん)

まずは本人、家族と「リスクは当然ある」という共通認識を持つことから始めます。


一方のリスク(誤嚥)だけを評価して、もう一方のリスク(嚥下機能の低下による生命力の低下)を無視するのは、介護の専門職としては片手落ちです。

両方のリスクを評価した上で、説明・提示する。これが本物の介護職に求められる姿勢です。(注:佐々木さんは訪問診療の医師です)


さらに、介護職が本来の専門性を発揮するための前提として、管理者・経営者がリスクに対し、専門職と同じ認識を持っていることが重要です。

どんなに優秀な介護職がいても、管理者が「生活の中のリスクをゼロにせよ」と号令をかけるようなチームでは、介護職が本来の専門性を発揮することができません。


管理者が専門職ではなく、自分でリスクの評価をできない場合も、「リスクは当然ある」という認識さえ持っていれば問題ありません。


スタッフが安心してリスクと向き合えるようにするのが、リーダーの役割です。そのために、こんなふうに声をかけます。

「生活にリスクがあるのは当然です。そのリスクを評価し、本人・家族に両面からきちんと説明した上で、リスクと共にどう生きたいのかを相談してください。その結果、もしリスクが現実化しても、僕が介護職を責めることはありません。」


めでたし〃


立崎直樹

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