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「まだ成長できる」と信じる人は、成長する

読書に関する記事は久しぶりです。
読書自体は続けていて、いい本にも出会っていたのですが、こうしてアウトプットすることをしばらくお休みしていました。
久々に読書に関する記事を書きたくなったのは、この本のおかげです。

今回紹介する本は『マインドセット「やればできる!」の研究』です。
読もうと思ったきっかけは…忘れてしまいました。おそらく前に読んだ何かの本でお勧めされていたような。

マインドセットとは?

この本のメッセージはいたってシンプル。
「人間の能力は学習や経験によって伸ばせるのか、それとも変化しないものなのか」という議論に対し、どちらの説を信じるかによってその後の人生に大きな開きが出てくる。というもの。
ポイントはどちらの説が正しいかではなく、どちらの説を”信じるか”で全く違う人生が開けるということ。

著者はキャロル・S・ドゥエックさん。スタンフォード大学の教授で、パーソナリティ、社会心理学、発達心理学の世界的権威と紹介されています。
「信じればできる!」という話は、宗教じみていたり、スピリチュアル系な話に思えていぶかしく思う人もいるでしょう。
私も”そういう系”の本にはちょっと疑いを持ってしまうので、もし誰かの薦めでなければこのタイトルの本は手に取っていなかったと思います。(ということはやっぱり何かの本の推薦図書だったと思います)

この本の特徴は、数名の臨床結果から得られた説で結論を語るのではなく、数々の実験や論文に裏付けられているという点です。
客観性というのは、信頼度を増す大きな要素ですね。

しなやかマインドと硬直マインド 

本書では、人間の能力は学習や経験によって伸ばせると信じることを「しなかやかマインド」と呼び、人間の能力は生まれ持ったもので変化しないと信じることを「硬直マインド」と呼びます。
しなやかマインドの持ち主は失敗したときや困難に直面したときに、それを伸びしろ=成長のチャンスと捉え努力によって乗り越えようとします。一方、硬直マインドの人が失敗や困難に直面すると、自分の能力の限界を感じたり、失敗を環境のせいにしたりして、自分を変えるのではなく二度と挑戦をしないという選択をする特徴があります。

本の前半では、二つのマインドセットについての解説と、マインドセットの違いによってその後の人生が180度変わることを紹介しています。
前半、自分はしなやかマインドセットの持ち主だと思って読んでいました。僕は困難を目の前にした時に、無理・できないという言葉をなるべく使わずに、どうしたら解決できるかを考えるようにしているからです。

スポーツ選手の例

中盤ではスポーツ選手や有名経営者を例に、しなやかマインドと硬直マインドを対比していきます。
硬直マインドの代表がテニスのジョン・マッケンロー。天才的な才能で数々のビッグタイトルを獲得した世界のトッププレイヤーであるが、彼は自分の落ち度で試合に負けたことは一度もない。熱のせい、過度な期待のせい、ゴシップのせい、直前の食事のせい…などいつも何かのせいにして、集中力を高める訓練も感情をコントロールする努力もしなかったといいます。
もしマッケンローがしなやかマインドを持ち、自分を成長させるための努力をしていたなら、もっと長い間世界のトップを維持できたかもしれません。

長い間、世界のトップとして活躍したしなやかマインドの持ち主として紹介されたのは、バスケットボールのマイケルジョーダン。
マイケルジョーダンと聞けば、誰もが知るスター選手ですが、生まれつきの天才ではありませんでした。
高校代表のチームメンバーに選ばれずにがっくりと打ちのめされたジョーダンは、母親の「練習して鍛えなおしなさい」という言葉に従い、毎朝の早朝トレーニングに励み、大学進学後も弱点克服に絶えず努め、誰よりも積極的に厳しい練習に励んでいました。

面白い考察があります。
真のスター選手は、試合後のインタビューで「ぼくらは」「わたしたちは真と語り始める。自分をチームの一員と考えているから。そうでない選手は「ぼくは」「わたしは」と言い、チームメイトと自分は別の存在であり、チームメイトは自分の偉大さの恩恵に属しているように語るとそうです。

経営者・リーダーの例

またビジネスにおける硬直マインドとしなやかマインドの実例比較も大変興味深いものでした。
硬直マインドセットのリーダーは、自社の欠点を直視せず、自分だけが突出した存在でいたいと、周囲の人と比較して自分の方が上だと思えないと気が済まないという特徴があります。
業績をV字回復したり、大きく成長させた経営者が、硬直マインドの持ち主である場合、その繁栄が長くは続かずやがて衰退してしまいます。それは自分の正しさのみを信じ、自社の問題点に目を背けて、人を育てないからです。
硬直マインドセットの人が罹りやすいCEO病という危険な病気があります。CEOには権力が集中するので、自分は正しいと思っていたいという欲求を絶えず満たしてくれる世界を権力の力で作ることができます。警告サインが出ていても、「自分は完璧で会社は順調」という耳を喜ばせるニュースだけで自分を取り囲んでしまうことが可能だからです。
CEO病に罹らないようにするために必要なののが、しなやかマインドです。しなやかマインドを持ち合わせている人は、会社の状況を直視し、自身の判断に誤りがあれば素直に認め、その状況を乗り越えるための次の策を考え実行します。

経営者に限らず、組織のリーダーにも共通する大切なポイントを『ビジョナリーカンパニー』のジム・コリンズが述べた言葉として引用されています。
「社外の現実ではなく、経営者の顔色を第一に心配するような状況を経営者自身が許していると、会社は凡庸になり、もっと悪い方向にすら進みかねない」
自分に賛同してくれる仲間がいることはとても心強いのですが、もしかすると賛同しているのではなく、顔色をうかがって賛同せざるを得ない状況を許しているのではないか?と考え、僕はハッとしました。

マインドセットの違いで、人生はどう変わるのか

前半部で、僕は自分がしなやかマインドの持ち主だと信じて疑っていませんでしたが、読み進めるうちに、もしかすると硬直マインドなのかもしれない、と思うようになってきました。
どうしてか。

例として取り上げられたスポーツ選手や経営者は、みな超一流です。超一流の中にも硬直マインドの人がいるということ。では、硬直マインドとしなやかマインドの人の人生はどのように変わったかというと、一流になった後に違いがありました。
しなやかマインドの人は成長進化を続け、さらに高みに登り、一流である時間が長く、さらには後継者に経営を引き継いだ後も企業が成長し続けたのに対し、超一流に到達した硬直マインドの人は、到達した場所が最高地点でその後は衰退していくばかりでした。
硬直マインドの天才は才能で超一流まではたどり着けるが、それを維持・向上することができないということです。持って生まれた才能をそれ以上延ばすことができないということ。
しなやかマインドを持っていれば天才ではなくても超一流にたどり着くことができる。さらにその上へ、長い間とどまることができるということです。

硬直マインドとしなやかマインドの定義は、どちらの説を”信じるか”の違いだと紹介しました。
どちらも信じた通りになります。硬直マインドの人は、その人が信じた通り自分の持って生まれた実力以上には成長しないことを(成長のための努力をしないことによって)証明します。しなやかマインドの人は、努力によって人はどこまでも成長できることを証明します。

しなやかマインドを持っていたら、なんでもできるという話ではありません。
硬直マインドの人が、目標達成のみを自分の価値として捉えるのに対し、しなやかマインドの人はたとえ目標に到達できなくても、目標に向けて努力し成長したことによろこびやしあわせを感じます。

僕の場合、今の自分の能力でできる範囲であれば、困難に直面してもしなやかに解決策を考え努力をしますが、自分の能力に及ばない、もしくは達成の見込みが低いと思い込んでしまったことに関しては、成長のための努力をせずに別の道へと進んでしまう傾向があるからです。
これではいつまでたっても成長しません。
まずは「自分の能力はこんなもん」という硬直マインドよりも、「自分にも成長する可能性がある」というしなやかマインドを信じて、困難な状況に直面したときにも「何かできることはないか」と考えて、できることを愚直に努力したいと思います。

めでたしめでたし

立崎直樹

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