砂漠の村の子、ラズー。
オールドデリー駅を出発してから18時間は経ったかな。
やっとこさ目的地に着いた。
砂漠の街、ジャイサルメール。
見渡す限りカラッカラの砂、まるでアラジンの映画のセットにいるような光景が広がっていた。
ラクダに乗って砂漠へ旅に出るいわゆるキャメルサファリというやつをしに、やってきた。
案内をしてくれるらしいターバンを巻いた、いかにも砂漠の民って感じのおじさん。
笑うと金歯が光って眩しかった。
そのおじさんの後ろに隠れてこちらをチラチラ覗いてくる男の子。
彼の名はラズー。11歳で、学校には通っておらず読み書きは出来ないけど簡単な英語が話せる。
ここいらの子どもたちは小さい頃から親の背中を見て、生きていく術を学んでいるのだろう。
わたしがニコッと笑うと、その子は真顔でソッポ向いてしまった。 「ちぇっ可愛くねーの」って心の中でつぶやいた。
わたしは言われた通りに選ばれたラクダに乗り、おじさんにひもを引かれて出発した。
こんのラクダがまた腹立つやつだった。
あたしの顔を見るなりため息をつき、わざとおしりが浮くようにピョコピョコ走るような嫌なヤツ。
下まつげが長くて、口の中いつもモグモグしてて、態度も偉そうでとにかく超ムカつく。
ワクワクしてた気持ちが一転して、イライラしはじめ、こいつに何時間乗らなきゃなんだろってゲンナリしていた。 「チェンジで。」って言いたいところだけど、人数分しか用意されてないラクダちゃんたち。
わたしがチェンジしたら今度はほかの人が嫌な思いしなくちゃいけないって思うと、我慢しようかなって。
でもそんなわたしにいち早く気づいてくれたのがラズーだった。
彼はお父さんに何かを話し、私の後に乗せられ。
途端にエロまつげくんは大人しくなった。 「優しいじゃん。」大人気なくも、可愛くないと思ってた私はちょっと反省。
それから時間は経ち、40℃は優に超える灼熱の砂漠で体力の消耗も激しく、いつ熱中症で倒れてもおかしくなかった。
そんな中、わたしの後ろを歩いてた人たちがクスクス笑いはじめたの。
なにが可笑しいんだろうと首をかしげるも分からず、後ろのラズーを見た。
すると、「ゲッ」という顔をして舌をベッと出した。 「なんだこいつ。」と思いながらも、考える力もなくてまた前を向いた。
すると今度は、ドッと笑いが起こった。
こっそり影を見ると、ラクダのおしりをさわった手で、そっとわたしの背中にふれていた。 「ちょっと!なにしてんのよ!汚いじゃん!」 通じるはずもない言葉で大声を出すと、 「何言ってるかわかりませぇーん」みたいな顔でジェスチャーしてくる。
前を向くと同じことをしようとしたので、「やめてよ!」と言った。
すると彼ははじめて笑ったよ。
彼の笑顔は可愛すぎた。
疲れも、暑ささえもどっかに飛んでいっちゃったみたい。
ラクダの上の影は、1人から2人に。
それからわたしは旅が終わるまで、彼と兄弟のように仲良く過ごしたの。
ラズー、君はもう18歳になるんだね。
またあの砂漠に行けば、あの笑顔に会えるのかしら。
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