コロナ禍の夏、1頭で暮らすめすのライオンに会いに行きました。 長野県にある小諸市動物園の「ナナ」さんです。 野生では寿命は15年ていどと言われ、18歳のナナさんは高齢のライオンです。 新型コロナウイルスの影響で小諸市動物園もしばらく休園し、お客さんは激減。夏に猛暑が襲いました。 そして今年は、高齢のライオンにとって厳しい年でもあります。 1月に京都市動物園の「ナイル」(おす)が25歳で、7月には池田動物園(岡山市)の「モジロー」(おす)が20歳で天国へと旅立ちました
今年2月、岡山市の私立・池田動物園で飼育されていたアミメキリン「桃花」(24歳、めす)が天国に旅立ちました。日本にキリンが約170頭いる中で、5番目の長寿でした。経営が厳しいとたびたび報道される小さな私立動物園ですが、限られた環境下で桃花の幸せを願った飼育手法、およびその意識の広がりは全国で高い評価を受けました。飼育員の中山広子さんに桃花の飼育について寄稿してもらいました。 岡山市にある池田動物園の中山広子です。 2020年2月10日に亡くなったキリン「桃花」のお話をさせ
札幌市円山動物園で1年前の3月に公開が始まった4頭のアジアゾウが人気で、入園者が増えているそうです。実際に行ってみたら、ゾウ舎の大きさにびっくり!ゾウがのびのびとえさを食べる姿を、時間を忘れて見とれてしまいました。 動物園内のマップを見ても、ゾウ舎の存在感が大きい!! ゾウ舎は屋内(写真)、屋外を合わせて5200平方メートル(シングルテニスコート 約25個分)。前のゾウ舎の面積の17倍。日本では最大級のゾウ舎になりました。 屋内施設は天井から太陽光が入り、プール
おびひろ動物園(北海道帯広市)のインドゾウ「ナナ」が3月4日、天国へ旅立ちました。推定59歳は、めすのゾウでは国内最高齢。1月19日に自分の力で立てなくなり、約6週間にわたり職員が看病を続けていました。ナナの生い立ちと元担当飼育員の思いについて書きます。 1964年にインドから来園東京五輪が開かれた1964年の4月、ナナは推定3歳のときにインドからおびひろ動物園にやってきました。前の年に開園したおびひろ動物園の目玉の動物でした。 獣舎の建設が間に合わず、仮設獣舎という名の
動物の幸せな暮らしをめざす飼育について、第一線で活躍する飼育員さんの話を紹介します。2回目は「エンリッチメント大賞2019」の最高賞を受賞した、秋田市大森山動物園の柴田典弘さんの講演をやさしくまとめました。 会場(東京大学弥生講堂 一条ホール)が本当に満員になると思いませんでした。感謝を申し上げます。思いを伝えたい方がたくさんいます。 2013年に始まったトナカイ飼育の6年間の取り組みの話です。飼育の目的は「順調な繁殖と寿命の延伸」です。 まずは歯の摩耗対策です。
動物園の環境エンリッチメントのこと、知っていますか? 動物福祉に配慮して、飼育動物の「幸せな暮らし」をめざす取り組みです。動物園経営になくてはならないものになりつつあります。 具体的にどんなことなのか、第一線で活躍している飼育員さんの講演をまとめました。1回目は「エンリッチメント大賞2019」で大賞インパクト賞を受賞した、福岡県大牟田市動物園の伴和幸さんの受賞講演です。 日本で有害駆除されている野生動物の屠体をライオンなどのごはんとして与える取り組みです。伴さんは飼育員と
広島県福山市立動物園のボルネオゾウ「ふくちゃん」のノンフィクション「みんなで守れ! ふくちゃんのいのち」(フレーベル館、税抜き1300円)が11月に出版されました。 【ストーリー】広島県にある福山市立動物園には、日本に一頭しかいないボルネオゾウの「ふくちゃん」がいます。ふくちゃんは二〇一六年、結核という重い病気にかかり、生死をさまよいました。「ふくちゃんをすくいたい!」その一心で、動物園のスタッフをはじめ、たくさんの人が立ちあがりました。みんなの願いが、かけがえのない命を
マツコはアフリカから連れてこられ、不遇な時代があったが、数十年かけて群れでのびのびと暮らすようになる。連載3回目は、飼育係の大栗靖代さんにリョウマの出産と、飼育を通じて伝えたいことを聞いた。「私たちは動物たちの幸せを勝手にあきらめるのではなく、追求していかないといけない」と力を込めた。 マツコの出産に驚きと喜びQ マツコは出産を経験するのですね。 A 2008年にかみね動物園にやって来て3年間、交尾は一度も確認できませんでした。マツコは繁殖できる年齢ですが、もう30歳を過
複雑な過去があるチンパンジー のマツコは、どのようにして今の「穏やかな日々」を送ることになったのだろう。かみね動物園でマツコを一番近くで見ている飼育係の一人、大栗靖代さんに聞いた(マツコの全体的な話は連載①へ)。 担当飼育係から見たマツコQ マツコはどんな特徴があるチンパンジーですか。 A かみね動物園には7頭のチンパンジーがいます。顔、特に口の周りに白い部分がまだらに残っているのがマツコです。人気のタレントさんと同じ名前だからか、お客さんには名前が印象に残りやすいみたい
4歳から水族館のイルカショーのスターとして活躍。ショーに出られなくなると、名前を変え、日本各地の園を転々とした。来日40年を迎えた、あるチンパンジーの波乱万丈な半生を追った。 どんなチンパンジー?名前は「マツコ」。推定1978年、アフリカ生まれ。めす。今は茨城県日立市のかみね動物園で暮らす。2012年に「リョウマ」を出産。飼育員から愛され、今は群れの仲間と動物園でゆったりとした日々を過ごしている。 マツコ(上の写真左)と息子のリョウマ(同右)。かみね動物園のタワー型の展示
大阪市天王寺動物園の最後のコアラ「アーク父ちゃん」(おす、12歳)が10月10日、繁殖目的でイギリスの動物園ロングリートサファリパークへと旅立った。天王寺動物園は30年間続いたコアラ飼育に幕を閉じ、大阪にコアラはいなくなった。9月28日、ユーカリの木々が生い茂るコアラ舎前でアークの「お別れ会」が開かれ、約600人が参加した。そこで担当飼育員が語ったこととは。涙は隠せなかった。 ●飼育担当者としての思いを伝えたい コアラのイベントガイドはおそらく今日が最後になりますの