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歌集紹介

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鎌田国寿歌集 『夢路を辿る』

鎌田国寿歌集 『夢路を辿る』

鎌田国寿歌集        『夢路を辿る』の世界長澤ちづ(ぷりずむ代表) 
        

高祖母の仰ぎし桜の静けさを  探し求めて夢路を辿る

歌集名となった一首。高祖母とは祖父母の祖母のこと、作者から見ると四世代遡ることになる。勿論互いに知る由もなく、されど血の繫がりは紛れもない、そんな存在の女性だ。幕末から明治の頃の女人に桜の面影を託して詠う作者は、現実を見据えて詠うよりは浪漫性豊かに事

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古城いつも歌集『クライム ステアズ フォー グッド ダー Climb Stairs For Good Da 』

古城いつも歌集『クライム ステアズ フォー グッド ダー Climb Stairs For Good Da 』


啓蟄とタイムラインを流れ来て幸とは常に登るきざはし
(巻頭歌)

投函の三日後葉書戻りきてあと十円のおきて切なし

書を捨てよ街へ出ようと促され生き延びた技まんざらでない

この指の紅き血吸えば玉いずこのお方にこころ委ねん

恋愛の世代を過ぎたこの頃は水を得たうおいやそれ以上

また遅れる武蔵野線をのんびりと待つ乗客の市民の品格

教科書の世界が全てマスカラの警官トーキューポリスハウスドール

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高橋美香子歌集『ぶどうの杖』

高橋美香子歌集『ぶどうの杖』

 

深く考え悩みつつ結論に綾部 光芳(響)

行く度に親孝行と言われるがまことそうならホームには入れず

「施設に居る僕は終身刑です」父の言葉の刺さりて取れず

「あなたがね家の嫁ならいいのにね」患う姑はわれを見て言う

見舞うたび悲しませぬよう気遣いぬ人であることやめてゆく義母

貰いたる立派な杖をもちたれどそれにはふれぬおトボケの父

一本のぶどうの杖が支えたる父のからだは一枝でよし

歌集

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清水典子歌集『貫流』

清水典子歌集『貫流』

貫流

足音にうわつと飛びたつ群雀黄金稲穂の微光をひきて

原生林の走り根の苔ひくひくと脈うちわが手押し返しくる

さやさやと雪野をくだる堰の水躍る煌めき無尽にのせて

開山の遺徳をしのぶ坐禅石木洩れ陽さははさはさは揺るる

関係の書類を破棄しきつぱりとくちなし匂ふ庭におりたつ

露天風呂にすつぽり浸り根元より裸木ゆさぶる風を見てゐる

背後よりふんはり肩掛けかけくるる鍬胼胝厚き大き掌

栄光は前

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清水素子歌集『生の輝き』

清水素子歌集『生の輝き』

序 覇王樹社代表 佐田 毅~ 後水尾院歌壇・古今伝受の研究者の待望の歌集 ~

資料に忠実で分析的な研究を続けられている清水さんの歌は、硬質なのではないかと思われる人もいるだろう。しかし、学究から離れた時の清水さんは、素直な心で純粋に自然に感動したり、学生や家族に真摯に向き合ったりして、温かな人柄を彷彿とさせる歌を多く詠まれている。

そろそろ歌集を纏めてみてはどうかとお誘いしたところ、平成十一年

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渡辺茂子歌集『湖と青花』

渡辺茂子歌集『湖と青花』

 帯文
一首一首の歌をよく読むと、それぞれの歌のもつ味わいが微妙に深く連鎖し、豊かにひびき合う。
これは不思議なチェーンストーリーである。歌の背景にあるのは、みずうみと青花を原点としたマリン・ブルーの美しいバラードだ。

水浅葱に明けゆく今朝のみ空よりこぼす雫やあお花咲く

空の碧に溶けつつ開くあお花ようつしみの惨告げざらめやも

爪染めて摘みゆく花の籠の量幾世重ねし近江の女

腰かがめ花びら摘み

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渡辺茂子歌集『アネモネの風』

渡辺茂子歌集『アネモネの風』

帯より
言葉が無力化している時代に《アネモネの風》一巻はいきいきとして詩の永遠性に目を向けている!
作者は、「朝日新聞」滋賀歌壇選者

海渡る蝶のいのちに立ちつくす伊良子岬の白き渚に

本能と言ふは易しもアサギマダラ超えゆく海のはたて想へば

点となり波の上より消えたれど今は祈らむ蝶の運命と

神島に集ひて越ゆとふ三千キロまさきくあれなまかなしき命

ひたひたと寄せくる波よ渡りゆく蝶のいのちに何と

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山口美加代歌集『銀河を渉る』

山口美加代歌集『銀河を渉る』

帯 文
混迷の時代を、銀河を渉るようにしなやで大胆かつ繊細な感性によって紡ぎだす瑞々しい歌のリズム
富良野のラベンダーの香りから街の小さなカフェの香り
共に生きた日々の歌を亡き男に贈り、
また明日に向かって歩み続ける
都会の銀河を、
そしてあの遥かな銀河を目指して……
(佐田公子)

雲ひとつ止まらぬ富士の全容のきれいすぎるのが少し気になる
(巻頭歌)

イヴの夜の街の匂いを分けてゆく編み上げブ

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西原寿美子短歌集『潤哉へ 口ぐせは「あぁ幸せ」』

西原寿美子短歌集『潤哉へ 口ぐせは「あぁ幸せ」』

巻頭5首
不自由を泣きて訴ふ子に追はれつめたき貌を見せし日もあり

母も子も疲れ果てたる夜の灯に心すさびてゆく身怖れし

落ち込めるわれを充たして寄りて来る吾子の手足は未だやはらかき

麻痺の子を抱く腕 のしびれつつひと目はばかる母若かりき

子は手足自由きかねど母われの呼びかけわかりほほゑみ返す

あとがき抜粋
一九七二年八月。潤哉は仮死産で生まれました。大学病院をいくつも回って受診するも、病名

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西口郁子歌集『実生のままに』

西口郁子歌集『実生のままに』

実生のままに清水 信 (文芸評論家)

西口郁子の歌集『実生のままに』は「覇王樹叢書」の第204篇に当たる。堅牢な造りの歌集。奥付によれば、著者は大正十五年四月、津市生まれ。長男の罹病と急逝により歌作を始めたという。印田巨鳥、橋本俊明に師事。
生きるとは、親しい人を送ることである。二十三歳で長男が癌でこの世を去った時「戦死」と思った由。

八十三歳で父を失って、夫を送る日も迫ってくる。六十七歳の夫

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青山良子歌集『月の卵』

青山良子歌集『月の卵』

鉱脈社(平成24年5月刊)

新しい短歌の一方向杉谷 昭人(日本現代詩人会)

この『月の卵』は、青山良子さんの第二歌集であり、三章計四四二首が収められている。十年前の第一歌集『光の起点』の折には、自然詠の一部が歌集一巻の完成度をそこなっているように見受けられる部分もないではなかったが、今回の『月の卵』においては、女性らしい多様なモチーフとその文体の統一にそれなりの配慮と工夫がうかがわれて、きわめ

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成田ヱツ子歌集『馬に乗つた狐』

成田ヱツ子歌集『馬に乗つた狐』

 「DNA」に思う阿部 京子(黄鶏)

歌集を頂いたとき、このユニークな書名に興味をそそられない読者がいただろうか。そして、読後誰もが、書名決定の趣旨に納得した筈である。
あとがきによると、小林周義氏の指導当初の一言であったという。余程鮮明な印象をもたれたのであろう。私も劣らぬ強烈な印象を与えられた。また加えて装丁の面白さも読む意欲をそそる一因をなした。

兎に角明るい。深刻であった筈の作品でも明

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    大森孝一歌集『峡の夕映え』

大森孝一歌集『峡の夕映え』

歌における感受性と青春性 川口 祐二(エッセイスト)
 
大森孝一さんは一九二二年、つまり大正十一年生まれの歌人である。まだお目にかかる機会を得ていないが、その歌歴は三十年と長い。この度の第二歌集『峡の夕映え』を一読して、その若々しい感受性に感銘した。
若々しいというのは、橋本俊明さんが巻末に書かれた「跋」の中にある、「作品のもつ青春性」に通じよう。
巻末近くの「みちのくの海岸」の時宜にかなった何

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    大森孝一歌集『老いの小夜曲』

大森孝一歌集『老いの小夜曲』

橋本 俊明(覇王樹同人)
私事ながら平成二十八年私は、胃痛に冒された。さらに翌年、愚妻が子宮体癌を罹患し、しかもステージ四ということで狼狽えた。そんな折、九十五歳を前にして、大森孝一氏から第三歌集を出したいと言ってよこされた。実は氏は二年程前から心疾患を病み、津駅前に泊まり込みの宿をとっての熱心な支社例 会出席も、欠席を余儀なくされるようになった。失礼ながらご高齢のこともあ り、このまま退会される

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