【くりくり坊主】
月曜日、出張理髪店が病院に来る日だった。
この病院に来て直ぐ、ナースのナミちゃんに髪の毛を切りたいのだけどと相談すると、「出張サービスがあるみたいだよ」と言って相談員に聞いてくれた。
本来なら前の週にも来ていたらしいのだが、隔離中でカットできなかった。
散髪は、5階のデイルームで行った。
ナースに連れられて5階に行った。
電動車椅子で初めての散策だった。
散策とは大げさだがそんな感覚だった。
電動車椅子でちゃんと移動できるか心配だった。
5階につくとナースが「5階のナースに連絡してもらって、そうしたら迎えに来るから」と言って帰って行った。
散髪会場に着くと、小太りの小さいスポーツ刈りのばーさんがいた。
「カットして欲しいのですが、大丈夫ですか?」と聞くと「大丈夫です。どんな感じにしますか?」と返って来た。
あれこれ言うのも面倒だし、言ったところでわからないと思ったので「マルコメで」と言った。
「どのくらいの長さにしますか?」と聞かれたので「バリカンで短く」と言った。
どうせまた伸びてくるし病院だしと思った。
結果、0.3ミリのくりくり坊主となった。
中高の部活以来の坊主だ。
鏡に映った自分を見て、みすぼらしい坊さんみたいだと思って失笑した。
カット料金は、2,000円だった。
高い気がした。
帰りにナースステーションに寄って「自分の病棟に戻りたいからナースを呼んでください。」と言うと「何処の階ですか?」と聞かれ「3階です」と答え待つように言われ、待った。
待ってる間に、なんかチクチクするなー
毛が付いてると思うが自分で払えない。
明日風呂だし、我慢だなと思いながら時計を見ると10分ぐらい経過していた。
その時、後ろから声を掛けられた。
「どうしましたか?」5階のナースだった。
僕は「迎えのナースを待っているのですがまだ来ないんです。」と言うと、「私がお連れしますよ。何階ですか?」と聞かれ「3階です。」
・・・ここで気がついた。3階じゃない!2階だ!
3階は前の病院の病室だ。
待っても来る訳がないのである。
5階のナースに「すみません。3階は前の病院でした。今は2階です。」
当然のことに笑われた。
ちょっと恥ずかしかった。
つづく
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?