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【執刀医の自信】
リハビリを始めたころは、60度しか曲がらなかった膝も2週間経つと80度まで曲がるようになっていった。
見た目でわかるぐらい成果が出ると、リハビリがとても楽しくなる。
リハビリ病院に移れば、もっともっと回復するのかな~と思いながら今ある環境で頑張った。
ここのリハスタッフは、とても良い雰囲気で一生懸命に取り組んでくれていた。おかげで、僕もモチベーションが上がった。
そう、僕は単純な性格なのだ。
単純なので、楽しくリハビリするともっと頑張った。
若いスタッフは、やはり地方出身者が多く、だいたいが寮住まいだと言っていた。
寮は病院近辺に複数あり、その中でも当たり外れがあって僕の担当の子は外れ住まいだと言っていた。
外れ部屋は、狭いとの事だ。
僕の担当の子は同期が多いと前述したが、皆仲が良く度々飲み会をやっているようだった。家が遠い子もいて3畳の部屋に無理やり泊まっていくらしい。でも男2人では3畳はとても狭く1人は湯船にくの字になって寝ていたそうだ。
そんな話を聞いて、当の本人が来るとまたワイワイする。若い子といると大学の教室にいるようで楽しかった。
また、同年代の細野さんとのリハビリも昔話で盛り上がり楽しかった。その細野さんとリハビリ中に執刀医の回診が来た。
「どう?リハビリ頑張ってる?」と先生は聞き、続けざまに「何度まで曲がるようになった?」と聞いた。
「80度です。」と僕は言った。
「じゃ90度までOKね」と先生は言い、僕の足を持ち上げガツンガツンと曲げ始めた。
あまりの痛さに声も出ない!
細野さんに助けを求めるように、細野さんの顔を見たらあんぐりと口を開け驚いていた。
本当に痛い時は、声が出ない。
先生はと言うと「この調子で頑張って」と言いながら病室から出て行った。
僕は、「めちゃ痛かったですよ!」と言うと「だろうね~今のリハビリは、痛くしないように行うからな~先生は自分で執刀してるから、よほど自信があるんだろな~」と言った。
リハビリを再開すると、「あれ?90度に曲がるようになった。」と細野さんは言った。
僕はとっさに「痛みの先に、道があるんだな~」と言うと細野さんは「それは、名言だね」と言って2人で笑った。
つづく
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