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オオカミ ギャリー・マーヴィン

WOLF
Garry Marvin



「オオカミが『免れがたい無慈悲な人類の敵』でありつづける以上、そんな生き物と融合しようとするなどおぞましいことである。」



オオカミといえば、「赤ずきんちゃん」。
オオカミといえば、「人狼」。

この本に描かれているのはなんだろう?
面白いことが見えるね、ここに描かれているのは、人間の恐れるオオカミではなく、人間の恐れるニンゲンだ。
赤ずきんちゃんの狼も、狼男も「オオカミ」じゃなくて、罪を犯す「ニンゲン」を描いたものだ。
「狡猾」で「獰猛」とはニンゲンにいちばんぴったりくる。

人間は物語る生き物で、「悪いことはしてはいけない」と法で押さえ込まねばならないほどに「悪い」生き物なんだ。
けれど、自分の醜悪さを直視できない狡さからそれを他ものもに投影する、そんなのにもってこいだったのがオオカミだ。
彼らは肉を喰らい、闇に生きる。そしてわれわれ人間様の財産(家畜、土地)を脅かす得体の知れないイヤラシイ存在だ、と。そして今もそのイメージを持つ人は実際のオオカミ知ろうとしないない人だ。そう、自分とは異なる理解不能な相手は容易に殺せる、わかろうとしないことで相手に対してどこまでも残酷になれる。

人間は宗教と結託し「汚いもの」を自分以外の何かになすりつけてきたよね。
悪魔(病人)、魔女(女)、狼(ビビリなケモノ)。
これらを「邪悪な者」とし、何か起きた時のスケープゴート、自分たちとは違う廃すべき者とした、そして正義の名の下に残酷に殺す。
まっこと残念なことにその「邪悪な者」はただの「弱き者」であり、ホントに邪悪なのは正義を下す者なんだけどね。。。

ニンゲンの本能なのか自分達に「似ているけれど、ちょっと違う者」に脅威を抱くよ。見た目にしろ、宗教にしろ、違うやつを「いじめ」たくなるんだね、「異分子ヲ排除セヨ!」なんだ。
「悪魔」とされたのがなんでもっとどでかくて恐ろしげなクマじゃなくてオオカミなのかも、クマがもっぱら単独行動のスカベンジャーなのに対し、オオカミは高度に社会化された群れで狩りをするとこ、似てるんだねニンゲンと、だから脅威だ、ライバルだ、邪魔なんだ。

この本のいいところは最初にオオカミという動物の「科学的」生態がいちばん初めに「どんな動物か」って書かれてるところ。この章はとてもオモシロイ!イエローストーンでのオオカミの写真もすごくいい!

その後の章はニンゲンとオオカミの歴史だけど、ああ、ヒドイッ!、ぼくは辛いよ、だってさ、もうそこにあるのは冤罪による殺戮だけだ。
こういうニンゲンの歴史を見ると本当に愚かで邪悪な生き物だなって。
ポウくん教のぼくがいうのもなんだけど、宗教ってやつは人間の悪行を正当化する、ほんと人間様だけに都合のいい「物語(こじつけ)」だなと。いつだって「正義の殺戮」の理由に使われてる。
ニンゲンという生物がそもそも「殺し好き」なのか、ニンゲン増えすぎの「調整」なのか、同種(似ているけれどちょっと違う者)嫌悪の執拗さが怖すぎる。もう人間の歴史自体がえげつないホラーだ。ゾンビ、モンスター、エイリアン、悪霊。。。彼らの凶悪さでもなかなか一種を「絶滅」させるまでしつこくないんだ、いや、ほんと、生きてる人間様が一番怖いって。


最後にオオカミ再導入について、意外にも日本では反対派が少ないという!なんでもアメリカなんかと違って農耕民族なもんだから畑を荒らすシカとか間引いてもらえると助かるって。

でもさ、人間様、勝手だからさ、「ハブとマングース」(生物兵器なのかよ)みたいなことになって、オオカミたちがひどい扱いされるのは見たくないよ。
ポウくんが彼らについて行っちゃうかもしれない、そしたら、ぼくはアシリパさん(ゴールデンカムイ)みたいに泣いちゃうよ。。。

イエローストーンではうまく行って、本当に嬉しいけど、日本、せまっこいしなー。キャンプとか流行ってるし、ツキノワグマみたいに人間のわがままで撃たれたらやだな。。。



もう、彼らを傷つけたくないし、殺されるのなんか見たくないよ。。。
ホロケウカムイ。。。ぼくのカミサマだから。。。



「オオカミの逃れられない宿命、それは、人間にとって無視するにはあまりにも強い影響力のある生き物であり続けたことだ。その未来は、人間がどれだけオオカミに配慮しようとするかにかかっている。」


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