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何度でも読み返したいnote4

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何度でも読み返したいnoteの備忘録です。 こちらの4も記事が100本集まったので、5を作りました。
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2022年11月の記事一覧

帰宅電車の男性と窓の星

夜7時を過ぎて電車に乗ると、 車内は一家の主人であろう男性達が 8割を占めていた。 この世は男性の方が多いと思わされるほどだ。 着込んだ男性4人が対面式ボックス席に 窮屈そうに座っている。 そのうち1人が降りたので、 女1人で混じって座った。 前の男性が考え事でもしているらしく、 目を閉じ眉間にしわを寄せ、何かを数えるように指を折っては、また,数え直して指を折る。 その左手薬指に結婚指輪がはめられている。 50代半ばに見える、ごく普通のおじ様。 周りを見ると、半数ほどの

もう東京には帰らないかもしれない

転職のために東京を離れて、8年が過ぎた。 東京には家族も友人もいるし、美味しいものやお洒落なもの、なんでもある。私は東京で過ごす時間が好きだ。 でも、おそらく今後、自分から進んで東京に住むことはないだろうと思う。どこにでも住んでいいと言われたら、迷わず大阪を選ぶ。 最近特に強くなってきたその気持ちについて、少し具体的に言語化してみる。 その前に、私と東京との関係(?)を簡単に書いておく。 私は東京で生まれ、30歳まで東京で育った。 ただし父親が転勤族だったため、1つの場所

夕陽の部屋と秋映りんご

リビングの扉を開けると 部屋に、西日が差していました。 斜めの日差しが、 波打つレースカーテンの縦縞を通過して ソファに、床に、光を投げています。 ワックスの効いた木目の床に 光が反射して、部屋全体が 明るい色をしています。 昼間、ついうたた寝をして 起きてみると すっかり夕方になっていたのです。 やさしく揉みほぐしたような 夕陽のぬくもり。 手のひらで受けるとそれは ふっくらとあたたかく、 肌の上に心地よく広がります。 リンゴをひとつ、剥きました。 長野生まれの品

さつまいもを入れてくれていたダンボール箱を、忘れたくない

「他に送るものある?」 電話越しの母の言葉に、思わず甘えそうになってしまう。あれもこれもと言ってしまいそうになるけれど、いやいや、「近所のスーパーで買えよ」な話なのだ。 * 毎年、地元の特産品が出回るシーズンになると、母が「送ろうか?」と連絡をくれる。子どもの頃から食べてきた地元の旬の味は、大人になった今でも私の味覚を虜にしている。年に一回、特産品が大々的にスーパーや物産展、農家さんの家などで販売されると、母は東京にいる私に「少し送ろうか?」と聞いてくれるのだ。 母の

昨日の微分明日の自分

一言多いひと、は敬遠されがちだが、一文字多いひと、一文字違うひと、は色々なことを考えるきっかけになる。 先日、母から「また病院で〇〇先生に会ったわ、お元気そうだった」とLINEがきた。 わたしが小学校のときの担任の先生にお会いしたらしい。 よく会うね、と返すとこう続いた。 「検診のサークルが一緒なのよ」 定期健診のサイクルが同じだから必然的によく会う、と言いたかったのだと思うが、サークルでも意味は通じる。 病院につどう高齢者同士が「最近あのひと見ないね、具合悪いのか