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「シニア」の強みとはなにか?

あるYoutubeで「シニアの人にはシニアの良さがある…」とおっしゃってた。僕も同感です。自分もむしろシニア寄りでもあり我田引水にならぬよう考えてみました。

(「ライオンキングに出演なさってる方ですか?」感あるね)

シニアはシニアならではの強みを活かしセッションに参加しましょう。
熱心に音楽に取り組む若者(音大生・ジャズ研学生)と、シニアの違いはなにか?

まず明らかに劣った部分はあります。

シニアが劣っていること

  • 体力

  • 記憶力

  • 初見能力・読譜能力(主に老眼による)

  • 楽器のコントロール能力

赤瀬川原平「老人力」にもあるが、加齢は負の影響がある。
知覚は減退し、筋力も持久力も低下する。
脳細胞も減少し、対応力も減退する。
うーん。つらい。

加齢はマイナスでしかないか?
シニアが優れている部分はなんでしょうか?

シニアが優れているかもしれないこと

  • 自分のことがどうでもよくなっている(達観)

  • スタンドプレーにおちいらない(ゆずりあい精神)

  • 天動説(自己中心)から地動説(自分は世界の中心ではない)

  • 自分を過信しない

  • おおらか。細かいところにこだわらない

  • 周りをよく見ている

  • あっさりしている(体力がないから)

  • 人生経験が多い

  • 自由

スタンドプレーからの卒業

若い頃は「自分が世界の王様」といいますか、世界の主役である感覚は多分にあります(私もそうでした)。こんな本もありましたね。

しかし、人生経験を積むにつれ、それは変わります。
人生、思うようにいかない。
「世間」に揉まれ、川の石が下流に流されて角がとれてゆく。もう河口に近いシニアになってくると、ずいぶん丸い石だね。
世間と対峙し、揉まれ、時にはタコ殴りにされ「矜持」や「こだわり」といった「角」がとれる。
どこかで、天動説(自分が世界の中心)から地動説に変わる。

シニアは基本的に地動説の世界を生きて長い。
その点では「自分」を過大評価せず過大な期待もしない。
それは、時に消極的で熱量の少ない演奏になるかもしれない。
しかし「老人力」をうまく利用し、自己の発露にこだわらず、相手を立てた力の抜けた演奏ができるかもしれない。

ジャズの演奏は、全員「俺が一番」「俺が王様」だとうまくいかない。
ハンバーグはお肉だけではつくれない。つなぎが必要。
我をコントロールして一歩下がって俯瞰できる円熟した人がいるとアンサンブルの成功につながると思う。

もっとも、これは人によります。
歳をとっても、他者への視線がないクソ野郎は一定数います。

むしろ気遣いさえなくなり、他人を押し退けて恥じない人もいる。
いわゆる「老害」ですかね(どの地方都市にも素晴らしいプレイヤーは一定数いますが、困った老害プレイヤーも一定数いるのは事実)。
こういう人には、何を言ってもまあ無駄でしょうね。
音楽以外の生活でプライドを満たせないから、我欲をコントロールできないのかもしれない。ひょっとしたら可哀想な人なのかもしれない。
(おっと!自分に刺さるブーメランを投げてしまった……)

ポジションによる傾向もあります。
「地雷」シニアは往々にしてフロントに多い印象があります(当社調べ)、コンボにおけるフロントは本質的にスタンドプレーですから、他者に配慮する習慣が得られにくいのかも(この辺は以前に書きました)

とはいえ、リズムセクションで「地雷」も居るから、結局は個人の性格なんでしょうけど。

大局観

歳をとると、知覚は衰え、細部への注意力はなくなります。
その代わり、ざっくり概要をつかむ力はむしろ鋭くなったりします。
「要するにあれやろ?」みたいな俯瞰する力。
小節や拍単位での細かいディテールは、若い人が得意だけど、大きな構成力はシニアがまさっているかもしれない。

自由

シニアの音楽は、勝ち残った一握りのレジェンドを除けば人生を賭けたものではない。基本は「余暇」であり「死ぬまでの暇つぶし」。
生活やプライドを賭けたが真剣さはない代わり、賭金ない麻雀はのびのび打てる。開放された心性は、アドリブに向いているのかも。

同様の理由で、一つ一つのプレーの失敗を引きずらない。
(これは欠点かもしれないが)

他の分野での経験を、演奏にいかせるか?

長く生きてれば音楽以外にもいろんな経験をする。
経験は自分の人格を作り、成長につながる。その経験を演奏に活かせるか?

違う分野でも、経験は、無駄にはならない。
ですが、違う分野の経験を成長の糧にするには、新しい分野でもある程度もがいて習熟する必要があります。

シニアでジャズ始めるとして、人生経験があるから若者より上達が早いなんてうまい話はない(脳の可塑性が失われている分むしろ時間はかかる)。
しかしめげずに頑張っていたら、ある時点で人生経験を生かせる場は、きっと訪れると思う。シニアで新しいことに取り組む醍醐味はここにあります。

まとめ

シニアにはシニアの味がある、と僕も思う。
がシニアらしさを活かしいい演奏をするのはそんなに簡単な話じゃない。
シニアのみなさんなら、そういう機微も十分おわかりですよね?

人生経験を積んだシニアが、童心にかえって新しいことに取組むのは良いことです。サミュエル・ウルマンの「青春」ですねー。

青春とは人生の或る期間を言うのではなく心の様相を言うのだ。
優れた創造力、逞しき意志、炎ゆる情熱、
怯懦を却ける勇猛心、安易を振り捨てる冒険心、こ
う言う様相を青春と言うのだ。
年を重ねただけで人は老いない。
理想を失う時に初めて老いがくる。

サミュエル・ウルマン『青春』

年齢関係なしに、新しいこと、自分ができないことに挑戦する姿勢は、むしろ若さそのもの。
 やっている音楽はジャズのアーカイブの再現であっても、個人的なenterprisingは鑑賞するに耐えうる価値があると思う。

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