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アドリブ研 : "But Not For Me" (2)

1: 曲について
2: Iさん(flute)作例    ←Now
3: Nさん(guitar)作例
4: Kさん(trombone) 作例
5: 私(trombone) 作例

But Not for Me回目次

では作例研究にうつります。
まずはIさん(地元にいらっしゃるフルートの方)の作例から。

Iさん作(フルート)

Fig.1a "But Not" by I take.1

げげーっ。なんかすごいしっかりしてますね…直す必要あります?
フルートだけに音も高いしめちゃピロピロしてる。

ところでこの作例研のお題は、1コーラス完結のソロなのか、3-4コーラス分のソロの導入部かラストか、指定ありません。なので盛り上がりも作者次第ではあるのです。この作例はどちらかというと長いソロの後半盛り上がりの部分と推察します。
よくできていると思いますが、一言批判するなら、ギンギンにキマってるArt Pepperみたい、とは思いました(失礼)。
昔 "Art Pepper meets the Rhythm Section" の批評で「一度として同じフレーズがでてこない」という賞賛をみたことがあるが、それっていいの?思う。ソロを通じて一貫性や、モチーフなどがあるべきだと思う。
その意味では、このソロもカラフルすぎて、とっ散らかっている印象を受けます。思考時間が限られない書き譜ならではの現象で、アドリブでこれだけ繰り出してたら、ちょっとアレな薬物キメてる?と思っちゃうかも。
ま、ともあれ、フレーズを解析しましょう。

Aパート

Fig.2a "But Not" A by I take1

「間違い」レベルの修正点はなし。強いて言えば、5小節目2拍目のAbはF7ならAが望ましいが、Ebに向かう2小節の大きなツーファイブっぽいので、どっちでもいいとは思います。
前述のように密度が高すぎる印象。
冒頭のモチーフを利用しましょう。3小節目のフレーズの結びを同じモチーフ。5小節頭も同じフレーズ。7小節目は変更していませんが、こうすると、同じモチーフが4回登場したように見えますね。
2小節目4裏は3小節目頭GへのアプローチノートでF#に変更(好み)。
4小節目はC7-9と考えてDbを使いました。F7に行くⅡ-Ⅴでメジャーのはずですが、もともとは3625の形があって、そのFm7をF7に変化させたと考え、Gm7-5 C7-9のマイナーで吹いてしまいます僕は。
5小節目後半にもとの3連フレーズ再利用し、さらにF7らしい音づかいのAに変更。6小節目はオルタードのフレーズがいいですね(変更なし)。

Fig.2b "But Not" A by I take2

Bパート

Fig.3a "But Not" B by I take1

冒頭はAnother youのメロですね。それをAb→Abmでフレージング。いいじゃないですか。
3小節目頭Gは2小節ラストから一オクターブ以上下がり吹きにくいので上げました。
4小節目結びの音はBb。これは間違っていません。が、次のCm7を見据えてG7と想定しBとし次につながるよう音を伸ばしました。
5小節目後半はCm7のアルペジオで別に問題ないのですが、C→Gのフレーズがちょっと歌いにくい。4段目II7らしさの"A"の音を効かせ三度でおりる。
6小節目は書き方が違う(bCかBか)だけで変更なし。
7-8小節目は問題ないのですが作例研究なので敢えて変更。8小節目は要するにAltered Scaleっぽく下りてます(もしくはE7)
上がって下がるフレーズでは、どちらもダイアトニックではなく下りる時は別の語法(AlteredかCom.Dimか)のスケールを使う。バップあるあるです。

Fig.3b "But Not" B by I take2

Cパート

Fig.4a "But Not" C by I take1

考えてみれば、A/Cパートで4回でてきたセカンダリードミナントのF7、Iさんは一度もAの音は使わず(涙)。できればF7らしさがほしい!
ということで1小節目はF7(A)の音を効かせてAパートのモチーフを変形して再登場。
そして今度は2小節目ですぐモチーフを繰り返してます。2小節目の後半は、後述のDパート6小節目のフレーズを借用。
4小節目。この書き譜うまく歌えないな……なんで?と思いました。
5小節目のターゲット音に向けて駆け上がるフレーズなんですが、最初が速く(16分)て後半ゆっくり(8分)です。駆け上がるなら後半ギュン!と加速する方が歌いやすい。
というわけで変更。あとAパート同様マイナー2-5のDbを入れています(好み)が、EbはEが絶対に望ましいですね。
5小節目もAb(…)。しかしここも大きくFm7-Bb7のツーファイブと見なしているフレーズなので、まあOKか。バッキングはともかくアドリブではセカンダリードミナントを無視して普通のツーファイブで吹いてもそれほど変には聴こえない。逆に大きなツーファイブとして吹いたフレーズを、取ってつけたように単音をAb→Aに変えても不自然さがでます(技巧にもよりますが)。
8小節目はフルートらしくピロピロしていますがここは変更なし。

Fig.4b"But Not" C by I take2

Dパート

Fig.5a "But Not" D by I take1

うわー音たかー…と思ったけど、フルートやもんね。
ピロピロしすぎて一行はみでてしまいました。
2小節目4裏のCはちょっと違和感あり。もちろんSDMではなく普通のV→Iと考えてBbを想定するもアリですが、模範作例なんで一応コードに沿った音に変更。
4小節目。Cパート8小節目と似たピロピロフレーズです。
バイテン(double-tempo)フレーズは16分音符一本やり、8分音符のフレーズも8分一本やりだと、テクニックの割に退屈にうつってしまう。
Iさんマジメすぎるんですよね。そこでシンコペーションを多用し音を抜きました。
5小節目。おー「変なおじさん」ことHoneysucle Roseじゃないですか(笑)。
6小節目もそれでいってほしかったですが(たとえば同じフレーズを半音あげるパターンとか)6小節目はややブルージーなかっこいいフレーズ。これはこれでいいと思います(かっこいいので、Cパート2小節目で借用)。

Fig.5b "But Not" D by I take2

ということで、こんな感じになりました。

Fig.6a "But Not" by I take1

まとめ

基本的にはよくできている作例。そのままでもいいと思いました。スタンダードのお決まりフレーズも随所にありユーモアあるソロだと思います。
このレベルのソロは添削という範疇はこえているようには思いました。

課題として見えたこと。
この曲のフックとなりうるA/Cパートのセカンダリードミナント(F7)については、もう少しそれらしいフレージングを。
あとはバイテンですね。ゆっくり始まってターゲットに近づくにつれて加速するイメージ。あと、16分にしろ8分にしろ音がつまりすぎというか、8分をギンギンに重ねるフレーズばかりだとちょっとしんどい。
シンコペーションを適度に入れて音を抜いたり3連符をつかったりして(これはできてますね)緩急をつけてください。
あとは、モチーフを利用し、音数をおさえても意図が伝わるように、でしょうか。

おまけ:音源

Notionの機械音源です。悪しからず。
基本的には譜面を自分で弾いて違いなどを確認してほしいなーと思っています。
修正前のテイク

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