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オブリ研第5回 : "Bye Bye Blackbird" (4)

 1: 曲について   
 2:Mさん(tb)作例
 3:Fさん(tb)作例
 4:Oさん(tb)作例  ←Now

Index

では次。Oさんの作例です。

Oさん作

Fig.1a “BBB” by O take1 (F clef)
Fig.1b “BBB” by O take1 (G clef)

それでは解説にうつりたいと思います。

A〜Bパート

Fig.2a “BBB” A-B take1

Aパートの冒頭、定石通り休みで、5小節目で入るのはいい導入部ですね。
やや気になったのは作例の中でここが一番音が高いこと。音高必ずしも音量ならずですが、盛り上がり…すぎかも。
ただAパートの介入はここだけですから「ここで入るんだ」という明確な意思表示としてはいいかも。トロンボーンはどうしてもモゴモゴしますから、これも現場感覚として正しい可能性あります。

Bパート。G→F#のクリシェを強調するライン。1-3小節は同一モチーフでもあります。いいですね。
ただ、僕は怠け者なので1-2小節と同じモチーフで3-4小節を繰り返すかもしれません。(3小節目: D F、4小節目 Eb C とか)
4小節目最後の音Gは5小節目がCで結構離れてますから僕ならGよりAかBbで吹くかも(修正案)
6小節目:いろんな解釈がありますが Alteredとみなすのが自然。Oさん「理論は苦手」といいつつ自然にジャズっぽい調性外の音がでてきます。実践派ですよね。

Fig.2b “BBB” A-B take2

C~Dパート

Fig.3a “BBB” C-D take1

Cパートに来て密度が上がる。サビでピークを導くのは定石通りでGood。
ただこの場所の音選びには若干難があります。
1小節目。メロディはFとCですが、このアルペジオ的なフレーズが、おもいっきりFからCで、音がかぶるのでメロを邪魔してしまいます。またF7ののばしがBbでもろアヴォイド・ノートですから、違和感が大きい。メロディーのCとも二度でぶつかるため、あまりうまくサウンドしない。3小節目のAbも気になります(裏拍だし短いし、アプローチノートとして処理は可能ですが)
ということで、メロディを避ける形で音形を変えつつ配置してみました。
7-8小節はDパートのターンバックです。8小節目はB6小節目と同様Altered処理ですがAbm7-D7-Gm7-C7とコードを複雑化しているのでむしろあだになる印象をうけ、音使いは間違いではないですが、修正案に。
Dパート。5−7小節もとのメロにハモリの格好で白玉が入っています。6小節目 E音がメロにかぶるのはやや残念なので少し離します。

Fig.3b “BBB” C-D take2

修正後

Fig.4a “BBB” by O take2 (F clef)
Fig.4b “BBB” by O take2 (G clef)

いろいろ考えてることが伝わるいい作風だと思いました。
Bye bye blackbirdのようにシンプルなメロディーは、正直オブリの付け方って、難しいです。よく喋る人の合いの手って、空白に「それで?」とか「どうしたどうした?」とか言ってりゃいいけど、無口な人の合いの手って難しいですやん。しかも無口なそのメロディーを引き立てなくちゃなんないわけで、シンプルなのは案外難しいもんです。

Oさんからの質問:
音域は最初オクターブ下で書いて悩んで書き直しました。他の楽器との絡みと、音域はどのように考えたら良いですか?

特に三管とかホーンセクションの譜面書く時は各楽器の音域に考慮する必要がありますが、オブリに関しては一対一なので、単独でメロディとして成立すれば高低関係はあまり気にする必要ない、とぼくは思ってます。
他楽器との関係性でやや注意なのはメロがテナーかバリサク。メロがトロンボーンより下に来る可能性あるのでハモリの時にちょっと注意かも。

オブリでは、他の楽器との高低より、オブリ中の上げ下げを意識してます。
皆さんが僕と同じくらいの音域のトロンボーン吹きだとすると、チューニングBb~五度上のFあたりが一番吹きやすいはず。
盛り上がるとこではそれより少し上。
静かに、もしくは低め強調する場合はそれより下の音で吹き分けています。
ざっくりですけど。

半熟

最後に、私の作例です。私の作例は修正をしてもらえないので、修正案あれば教えて下さい。

Fig.5a “BBB” by hanjuku (F clef)
Fig.5b“BBB” by hanjuku (G clef)

一応解説します。
Aパート。2小節目のフレーズがモチーフです。
これを展開させています。
 5小節目はAb dimのフレーズです。黒本ではカッコで示されたコード。
Bパート。Aパートのモチーフのリズムをそのまま使い、密度を増やしました。
3-4小節目は少しだけ攻めた音使いにしています。アプローチノートで考えることも可能ですが、実はここ、Abm7-Db7を想定してフレーズをおいています。ボーカルオブリだったら失格かもしれませんが(歌いにくい)、比較的自由度の高いセッションやキメキメのバンド演奏ならバッキングに指示することは可能かと。
Cではモチーフを反転させてます。後半はやや音数を増やして展開しています。C7-8小節はそのモチーフからつなげたらこうなる、って感じに長いフレーズに展開しました。ウラを意識した長めのカウンターメロディー。
DパートはAのモチーフに戻り処理しています。

モチーフ展開

ということで、全体にmotivating(モチーフ展開)という技法で押し切ってます。
実は原曲のメロディラインもモチーフだらけですね。
スタンダードブックのBye bye Blackbirdの譜面をぼんやり(視点を大きく)見ていただきたいんですが、モチーフがみえてきませんか?
この曲はかなり大きめのモチーフを整合性を保ちつつ繰り返してできています。
オブリで示した作例はその反面小さなフラグメントを展開させて散りばめました。いずれも、モチーフというものの展開の例です。
当然ソロの時にもこのモチーフ展開技法は使えるし、大きな流れを作りやすいので、試してみてはいかがでしょうか。

テーマメロディーを作る作曲者たちは、メロディーメイクにさまざまな技法を凝らしています。それを理解すると、オブリを作るにも楽しみが生まれてくるでしょう。

この本はそういうメロディーメイクの技法がわりとしっかり掲載されている良書です。おすすめ。

今回4人の作例を比較してみました。それぞれに個性があってよかったと思います。
一応教訓的なもの言辞のために、わたしは「意図」とか「コンセプト」のようなものを強調して作例を作っていますが、コンセプトがよければいいオブリになるわけでもないです。遠近法ばっちりだけどクソみたいな絵画だってあるじゃないですか。
フィーリングと構造(理性と感性でしょうか)の掛け合わせ、そのバランスを楽しみましょう。

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