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オブリ研第6回 : "S' Wonderful" (2)

(1)曲について      
(2) 作例 Iさん(フルート) ←Now
(3) 作例 私(トロンボーン)

作例研究
では、今回オブリ研にも進出していただきました。フルート Iさんです。

Iさん作

Fig.1 "S' Wonderful" by I take.1

A〜Bパート

Aパートはボーカルを前面に出し、休符。いいと思います。
Bパート。

Fig.2a "S'Wonderful" B by I , take 1

メロディーが、1小節目・3小節目で、同じ形でメロディーを追いかける。結果的に輪唱です。いいと思います。伸ばしの音をどこで切るかは正直好みですが、主旋律のボーカルの伸ばす長さと合わせたらいいでしょう(現場で調整)。
7-8小節目はCパートに向けデッドポイントを埋めるフレージング。
7小節目は以前 "But Not"の回で述べた「駆け上がるフレーズ」パターン。多分Iさんの手癖というか書き癖なんだと思いますね。16分を書き直してもいいのですが、修正案では音を抜いています。
8小節目の最後はCパート頭の音がGであれば、これでいいと思いますが、Cパートでは後述するように音を変えています。それに合わせて変更。

Fig.2b "S'Wonderful" B by I , take 2


Cパート

まず、メロディを示しておきます。

Fig.3a"S'Wonderful" C melody

で、オブリ作例がこれ。

Fig.3b"S'Wonderful" C melody

1小節目。頭のGの音はメロディーとかぶっています。ここはちょっとBad。少し変えましょう。ボーカルにとって、メロと同じ音を楽器で吹かれると「カラオケ」状態。ある程度のレベル以上のボーカルにとっては最大の侮辱行為になるので気をつけて。
3-4小節目。3小節目、頭のGはメロと2度なので、これもぶつかる。
4小節目の GEFGというフレーズは悪くないが、これもメロのGに近い。
ということでメロから離しました。
修正案ですが、D→bD→Cはいわゆるコードの構成音から外れ、攻めた音使いです。2小節目のメロG-オブリDbはトライトーンの関係で3小節目のA-Cに解決する形。メロの補強という意味ではOKですが、リズムセクションの出すコードとは少なからず衝突はする。単音楽器ならではのアプローチですが、その衝突は人によっては許容範囲を超えるかもしれませんので多少検討を。(ちょう無責任じゃん)

7−8小節目はBb7→Eb7のツーファイブフレーズでDパートのAbにいくフレーズ。ソロなら全然問題ないフレーズです。かっこいいですね。
しかし7小節目のメロがF、8小節目はEbで8小節目はちょっとニアミス。
これくらい上下のレンジの大きなフレーズであればロングトーンに対してはどこかでぶつかるし、超高音でピロピロ系(なおかつフルートという耳障りな音ではない)ですからまず問題ないかとは思います。
ただ作例研究ですからオルタナティブを示しておきましょう。「君子危うきに近寄らず」で音を引き離しつつメロとハモるように作ってみました。

Fig3c."S'wonderful" C by I take 2

作例のように「上に逃げてピロピロ」作戦はフルートのように音色がぶつからない場合はかなり有効だったりします。下手に同じ音域でやりあうよりずっといい。また、高音域では音の衝突に対し許容範囲が広いという事実もあります(Lower Interval Limitという言葉を参照してください)。
その意味ではフルートは有利な楽器です。逆に一音の重厚さやインパクトに欠けるという構造的な不利もありますね。

Dパート

Fig.4a "S'Wonderful" D by I take 1

んー。これは、完全にソロですね(笑)
もちろん、ソロみたいに吹いてメロにかぶせる手法もあります。
前半は「メロと輪唱」でしたから、ボケ→ツッコミのような(コール&レスポンス)型でした。そこからメロとオブリが並立する同時のパターンというのは王道の展開です。Cパートの最後からDパートここまでつながっていると思えば、このパートのピロピロ、十分ありですね。
正直、作例がベターな気もしてきました。

しかし作例研究ですから、オルタナティブを示しておきましょう。
逆にピロピロしないパターンで作ってみます。
基本的にはBパートの発展型。Bパートから少し「盛った」感じにして軽く音を増して音高をややあげました。
4小節目はBのDiminishの音に添わせて、ややシンプルに。
5−6小節目はビッグバンドのバッキングをイメージしてAbに対してペダルポイントである5度のEbを用いています。フレーズを考えたくない時に、しばしば便利な手法です。

Fig.4b "S'Wonderful" D by I take 2

修正案

ということで修正案です。
途中でも述べましたが、特にCパートからDパートにかけて原案をあえて修正版に直さなくてもいいかもな、なんて、作り終わった今は思っています。
Iさんの原案には音の間違いはほとんどありません。
メロかぶりだけは注意してください。

Fig.1b "S'Wonderful" by I take 2

まとめ:

基本的には「間違い」というのは少ない作例であるように思いました。
オブリの原則論からも大きくは外れていません。後半はややソロっぽい感じではありましたが、Cパートのメロかぶりさえ避ければほぼ問題ないと思います。

現場に持ち込むオブリの譜面ですが「ちょうどいい」密度がポイントと思います。まず、風に飛ばされたり譜面が落ちても覚えられる程度の難易度のフレーズ。そして、その場の雰囲気でちょい足し引き、しやすい譜面。
フレーズに心の切り取り線を作っておいて「うるさかったらここ削ろ」とかPlan Bを考えやすい譜面。
あとは、これはスピーチとかもそうなんですが、オブリの草稿のために考えると、逆説的ではありますが、草稿が要らなくなります。譜面を作るという作業プロセスが経験になるので、譜面はむしろ不要になることは多い。

修正案は、そういう意味で取り回しのよい譜面、Plan Bの作りやすさ、という観点で作ってはいます。

「それで、ライブはどうだったの?」
「いや、それが……この曲が一番自分的にはあかん出来でした…」
「まじかよ!」

おまけ:音源

Notion iPadの音源です。
メロもオブリもフルートにしちゃっているのでアレですけれども…
いずれ演奏画像やNotionの生データを置くようにします。

修正前

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