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泣く資格

駅前の、パン屋がなくなった。

看板が剥がされて、
グレイの壁だけが残っている。

と、思ったけれど
実際のパン屋は2軒となりで、今日も元気に営業していた。

とすると、あそこのグレイの壁は一体何だったんだろう。

弁当屋も、薬局も、和菓子屋も、変わらずそこにあるから
わたしにはもう、わからない。


人生には、そんなことばっかりだ。と思う。
何度もグレイの壁を見送って
あそこって何屋さんだっけ? と考えても
思い出せることは、3度に1度より少ない。
友達に尋ねたって同じことだ。
いつも歩いている道なのに。


お店がなくなることや
グレイの壁を見るたびに
わたしは少し、さびしい気持ちになって
ああ、いってしまったな。もう会えないな。と思うのだけれど

何がいってしまったか思い出せないわたしに
ああ、泣く資格なんてないんだろうな。

人生には、そんなことばっかりだ。と思う。
痛みも傷跡も他人事で
失ったときばかり、親身な顔をして、よよよと泣いて
ああ、わかるわ
ああ、さびしいわ。
なんて、本心みたいにつぶやいて
何も思い出せないうえに、すぐ忘れるわたしを
ああ、とんでもなく薄情だな。と思うのだけれど


やっぱり
人生には、そんなことばっかりだ。と、思う。


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