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だからわたしは、クレープを食べない

クレープ屋さんが、たくさんある街で働いていた。
だけどわたしは、ほとんどクレープを食べなかった。

クレープを食べたら終わる、と思っていた。

甘いものは大好きだし、
クレープは今もなお、最強の贅沢のうちのひとつだ。

わたしの「好き」しかない。
薄い皮に、わたしの好きなものだけ挟んでくれる。
生クリームにいちご、プリンやチーズケーキ、アイスを挟むことだってできる。
全部大好き!
クレープはいつだって、わたしをしあわせにしてくれる。

だけどわたしは、ほとんどクレープを食べなかった。

だって毎日仕事は頑張ってるし、
毎日「お疲れわたし」と思いながら、あの道を通るし、
クレープ屋さんはたくさんある。
いつだって、クレープにかぶりつくチャンスがある。
そう思ったら、毎日食べたい!

だから、「どうしても頑張った日だけ食べよう」と思っていた。

きっとわたしにとって、「どうしても頑張った日」ていうのはあった。
でも、そのときも「いま食べたら、これ以上頑張らねば食べられないのか」という気持ちと、
なにより「いま食べてしまったら、次にクレープを食べられるのはいつになってしまうのか」
という、意味不明な不安に囚われていた。
だって、毎日食べないって決めたから、今日食べたら明日は食べちゃいけないでしょう…?

そんな状況になってしまうよりも、
のんびりと我慢を続けて、「あ、今日クレープ食べちゃおうかな」ていう身軽さで
まあ結局食べないんだけど
いつでも、そのチャンスを受け止められるような状態でいたい、と思っていた。

結局、2年と半分くらい会社に通ってたけど、数回しか食べていないと思う。
もしかしたら、クレープよりスターバックスの方が好きだっただけかもしれないけど。

またいつか、頑張ったらクレープ食べよう。

クレープは、何ヶ月も何年も、
ずっとわたしの目の前にぶらさがっている、特別なにんじんみたいなものなのだ。

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