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ふつうの日、ちょっと特別な時間

気づいたら、母親と1時間半も電話してた。
外で

ちょっとだけしゃべろう、なんてできるわけがなかった。


定期的に会っていた母親と会えなくなって、もうずいぶん経つ。
彼女が東京に遊びに来るたび、わたしは休みを取って、ごはんを食べたり散歩をしたりしていた。

会えないのを、寂しいと思う。
それでも、「会いたいな」と思えることを、わたしはひっそりと嬉しく思っている。

だから、久し振りの電話が「ちょっとだけ」なんて無理があった。


すっかり冷え切った身体で、バスルームに飛び込む。

冷えた身体に落ちるお湯って、なんでこんなに特別なんだろうって思う。
「溶ける」、と感じる。
身体が、じわりと溶けてゆくのを、確かめる。


今日は別に何があったわけじゃないけれど、
電話は楽しくて良い気分だった。
お湯に溶ける夜も、きっと特別だから、なんて言い訳をしながら「大事なとき用」のサボンのボディソープを手に取った。

頑張ったとき
頑張りたいとき
いつもよりちょっと大きめに舵を切りたいとき
わたしは特別な気持ちで、サボンのボトルを手に取る。


今日は何もなかったけれど、そういう夜もたまにはいいじゃないか。
ふつうの日の、ちょっとだけ贅沢な時間。
何もないけど、ちょっと特別な気分になりたい。
そんなささやかな願いくらい、ケチらず叶えてやってって、ぜんぜん悪くない。


お湯に溶かされながら、ふわりと香るシュガープラムの香りが、わたしの肩をそっと叩いた。



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