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仕返しサンタさん

「ええええええっっっ」

朝8時30分、
身支度を終えて、部屋に戻ろうとドアノブに触れたその瞬間。
わたしはひとり、悲鳴を上げた。

ドアノブにぶら下がっていたのは、わたしの推しポケモン(マホイップ)だった。
今回、マホイップのカラーバリエーション7種が発売されて、わたしは激しく悩んでいた。
7種ぜんぶは買えない。
ぜんぶかわいい。
この中から1つを選ぶなんてむりだ。
もう一度言う、ぜんぶかわいい。

ポケモンセンターに実物を見に行ったけど、やっぱりかわいい…
いちばん気になっていたのが「ミルキィミント」だったんだけど、売ってなかった。

ぜんぶかわいいし、いちばん気になるのは売ってないし、
マホイップは、部屋に4匹いるし…
そう思って、その日は帰ることにした。

家に帰って、もう一度ポケモンセンターのホームページを見る(いつも結構見ている)
「やっぱり、キャラメルミックスもかわいい…連れて帰るならこの子だった」
さっきも言ったけどさーーーやっぱ買えばよかったよ。
わたしはひとりでソファーを占領しながら、床に座る弟に話しかけた。
弟はいいやつなので、わたしがスマホの画面を見せると「かわいい」と言って笑った。

ドアノブにいたのは、「キャラメルミックス」のマホイップだった。

なんで、ここにいるの??
次に行ったときに、買おうと思っていたのに??
なんで??と思ったのは一瞬で、すぐに「弟だ」と気づいた。

わたしはポケモンセンターで、「この中ならキャラメルミックスかな〜〜〜」なんて言っていたし、昨晩は弟が帰る前に眠ってしまった。
きっと帰り際、ドアノブに引っ掛けてくれたんだ。
ていうか、買ってたんだ!??

びっくりして、叫んで、嬉しくて、
わたしは何度もマホイップを見つめて、握りしめて、にやにやと笑っていた。
あれから1週間以上経つけど、いまでも幸福さは消えない。
弟は、季節外れのサンタさんになった。

これが、最近わたしの中でいちばん嬉しかった出来事だ。
断言する。

仕事に向かう電車の中、わたしは弟にLINEする。
びっくりした!とテンション高めのわたしに対し、弟は「気づきましたか」とクールな返事だった。
いや気づくよ、ドアノブだし。
いやでも本当に、ありがとう。
わたしは何度もそう言った。
ほんとうに嬉しかった。
この出来事は、何年経っても忘れないだろうと思う。
思い出の中にときどき、そういう色濃いものが生まれる。
この出来事も、きっとそうなると確信した。
それくらい、嬉しかった。

よし! やり返そう

わたしは静かに、そう決めた。

そうと決まれば、わたしの行動は早かった。
買うものも決まっている。

弟は、ほんとうにバカだ。
コナンの映画を見たあとに、悩んで悩んで赤井さんのキーホルダーを諦めたのに、どうしてわたしにマホイップを買っちゃうんだろう。
同じくらいの金額で、赤井さんのキーホルダーを買えたのに。
ほんとうにバカだ。

買うのは、そのキーホルダーに決まっていた。
映画館限定グッズだと知っていたから、仕事後に映画館に向かう。
ついでに、彼が好きな灰原哀のポストカードも買う。
わたしはポストカードに手紙を書いて、弟の家に向かった。

弟がこの時間、仕事で留守にしていることはわかっている。
外は雨だったし、わたしはこの日はじめて、弟から託されていた合鍵を使うことを決めた。

合鍵を使って玄関を開けて、内側のドアノブに紙袋を引っ掛ける。
急に紙袋だけあったらびっくりするかもしれないから、哀ちゃんのポストカードを外側に貼り付けた。
これできっと、「わたしから」または「自分宛て」だと気づくだろう。

わたしは満足して、弟の部屋をあとにした。

この数時間後、弟から歓喜のLINEが届いたのは、言うまでもない。
あなた、同じことをわたしにしてくれたのよ。
それくらい、嬉しかったのよ。
思い知ったか!ありがとう!

誰かをよろこばせる、とか
自分以外の感情って結局わからないからさ、なかなか難しいこともあるけれど。

自分がしてもらって嬉しかったこと、をときどきこうして返したい。
それが誰かにとって「おせっかい」になっちゃうこともあるかもしれないけれど
わたしは、諦めたくない。

ねえ、やり返してやりたいよ。
これからもずっと。



ドアノブのマホイップ

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うちのマホイップたち。
5匹中3匹は、弟からのプレゼントで泣ける。

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全7種のマホイップが気になる方は、こちらから見れます。ほんとかわいい




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