わたしの絵の具は、いま静かに眠っている。
困ったな。
もう、30分以上パソコンの前に座っている。
「パソコンの前に座れない」ことが、かつてのわたしの悩みだった。
ソファーやベッドでうずくまって、気づいたら眠って何もしない。
そんな自分から、変わりたかった。
だから「毎日更新する」というルールを設けて、強制的にパソコンの前に座るわたしになった。
いまではすっかり慣れた。ような気がしている。
「書こうと思えばなんでも書ける」と信じていた。
どんなささいなことでも、物語になる、と。
タンブラーのお茶でも、デスクに置いてあるハンドクリームでも、今年のカレンダーでも、昨日の思い出でも。
そうなると、信じていたのに。
ピアノ日記を何度も何度も弾き直したことも、
書き始めたnoteをこんなに消したのも、久し振りだった。
「今日はもうだめかもしれません」という記事を書くわたしの姿が、ちょっとだけ浮かんだ。
ネタ帳を見てもピンとこなかった。
正確には「ピンとくるような支えになる言葉をいくつか見つけたけれど、エッセイとして切り出せるような気がしなかった」というのが、正しいかもしれない。
わたしはわたしを守れるように、いくつもの言葉を残していた。
言葉たちは、弱ってしまったわたしの心を照らすように、ぼんやりと輝いていた。
困ったことに、いまのわたしは何にも弱っていない。
すこぶる元気だし、体力もある、やる気も時間もある。
ただ、書けないだけなので、タチが悪かった。
それは、急に乾いた絵の具みたいだった。
さっきまで、平気な顔をしてキャンバスを彩ってたはずなのに。
どんな色も輝いているはずなのに。
輝いたまま、乾いている。
今日は、そんな夜だった。
そんな夜もある、と思う。
むしろいままでなぜ、「そんな夜」がなかったのか、不思議なくらいだ。
いままでは、「絵の具があるのに描けない」みたいな夜ばかりなのに。
眠っている。
わたしの絵の具は、いま静かに眠っている。
ゆっくりと水を落としても、解けることがない。
かたくなに、目を閉じている。
いいよ、今日は。
そのままおやすみ。
また明日ね。
【photo】 amano yasuhiro
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