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言葉の掛け算

「慎重に、急ごう」

同居人がやっているRPGを、見たり聞いたりしながら、ぼおっと過ごしているときの出来事だった。
次の目的地に向かうところで、少年は「急ごう」と言った。
それに対して20代の主人公が、「急いだら危ないだろ」とたしなめる。
「じゃあ、慎重に急ごう」
それが、少年の答えだった。

ささいな言葉の掛け合わせだけど、なんだかとてもすてきに思えた。
RPGというのは忙しなく次の事件が襲いかかる。
誰かが困っていて、それを助ける繰り返しだ。
なんとなくしか話を見ていなかったけど、やっぱり「急いで次の街に行かなくてはいけない」という流れだった。

急いだら危ないので、ゆっくり行こう。ということもできた。
危ないけど、困っている人が待っている。
じゃあ、「慎重に急ごう」
こんなに単純だけど、なんて美しいのだろう。
眠たい意識の中、その言葉だけが、わたしの耳に残った。

言葉の掛け合わせは、そういうすてきな匂いをまとっている。
相反するような言葉だったり
方向が違う言葉でも、並べることが許される。

美しく激しく
強くやさしく
悲しみながらも前を向く
冷静と情熱
勇ましくもていねいに
かわいいのに、格好良い

すてきだなあ、と思う。
別に、片方を捨てなくてもいい。
どちらも大事、で構わない。
目的を達成するためには、むしろどちらもあったほうが良い場合もある。

「修行と遊びと休息は、同じくらい時間を取りなさい」
というのは、ハンターハンターで見掛けたセリフだけど、今も大切に抱えている。
修行ばかりのゴンに、師匠がそんな言葉をかけるシーンがあった。
強くなるには修行が必要だけど、それだけじゃない。
遊びもしながら強くなる、いいじゃないか。

いいじゃないか、
そんな風に思う。
相反していても、大切な言葉はいつでもわたしを守ってくれる。
宝箱にたくさんしまって、必要なものをいくつか取り出して、掛け合わせて、そのときのお守りみたいにして。

そんな生き方って、
そんな言葉の使い方って、
すてきだなあ、と思う。


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