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素材の味がして、いいね

久し振りに料理をした。
同居人の祝い事があったので、手近なものでお祝いをしようと思った。

料理は本当に全然しない。
食べるものに、あんまり興味がない。
興味がないものにお金をかけたくないので、同居人がいなかった時代は料理をしていた。
お弁当も自分で作っていた。
信じて欲しいけど、料理をしないのであって、できないわけではない。
そしてやっぱり、興味がないので料理はほとんどしない。
今日は特別だ。

にんじんのしりしりは、お弁当を作っていたときによく作っていた。
これは覚えている。
あとは、厚揚げと野菜とかキノコをめんつゆで煮たやつ。
これも覚えている。
最終的に、チーズを乗せてあたためると美味しい。
あとは思い出せなかったので、このふたつを作ることにした。

作ると決めてしまえばあとは簡単で、
材料を買って、アニメを見ながら1時間ほど料理をした。

しりしりはちょっと味が薄い気がしたけど、同居人が帰ってくる頃には味が染みると信じることにした。
厚揚げは、ちょっと濃くなった。

同居人が帰ってきたあと、もう1度食べてみたけど
残念ながら、味の濃さは変わっていなかった。
同居人はだいたい好き嫌いもないし、「他人が作ったもの」は美味しく食べてくれるので、ありがたい。
作戦は成功だ。


「しりしりは、素材の味がしていいね」と言われた。

素材の味、って便利な言葉だなと思った。
言い換えれば、味が薄いってことだ。
料理の味じゃなくて、にんじんの味がするってことだ。

「こっちは、ビールに合うね」と言われた。

わたしはビールは飲めないし、
お酒のたぐいもほとんど飲めないのでよくわからないけど、
たぶん、味が濃いってことだと思う。
わたしも濃いと思った。
からだに悪そうだけど、味がたっぷり染み込んだ厚揚げって、なんでこんなに美味しいんだろう。


「しりしりは味が薄いし、厚揚げは濃い」って
言ってくれてもよかったのに。


わたしは、にんじんの味と、濃くなった厚揚げを噛み締めながら
日本語の美しさと一緒に、呑み込んだ。



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