ハッピーセット

うまくいかないなあ、と思う。

ピアノ、
毎日弾いているのに。

＊

そもそも「うまく」の定義がよくわからない。

あまいものをたくさん食べることがしあわせな人もいるように
辛いものを求めて旅をするひともいる。
そんなふうに「うまく」って、人それぞれ違うから

なにかきっと「あまい」とか「辛い」みたいに
定義付けしないといけない。

ということに気づきながらも、
わたしはなにも定めることなく、ふらふら弾き続けている。

宛てのない旅

結局、ピアノと他人になりたくないだけの
続けるための旅。だと思う。

＊

うまくいかないなあ、と思うときの半分は
弾きたい音が見えているときだ。と、気づいている。

理想にたどり着かなくて
録音ボタンを何度も押して、消して
確認してまた弾いて
もう少し進んで、また立ち止まって
そしてまた消す。
それを繰り返す。

＊

弾きたい音が見えることは幸福で
それに届かないことは、未熟で、不幸で、時には苛立つかもしれない。

「伸び代しかないね」とか
「弾きたい音が見えてすばらしいね」とか
そういう”言葉”は理解できるけれど

その瞬間は、
「アーだめだなあ」と思う。

＊

どうして、幸福と幸福は、セットでやってこないのだろう。
手に入れることは幸福なのに
その過程は苦しいような

人生ってね
いちごのショートケーキみたいなものよ。

層になっていて
スポンジもクリームも
あんなに美味しいのに
永遠には続かなくて
あんなに美味しいのは
スポンジとクリームが合わせっているからで

あんなにあまくて幸福なのに
酸い苺を求めてしまうわけだから

そんなふうに笑っていたひとのことを
思い出さずには、いられない。

※now playing