やさしくて適切な
いちばん小さな花瓶に、
赤い薔薇と、白いトルコキキョウを挿した。
*
立て続けにお花をもらって、うれしい悲鳴だった。
少し前までは「部屋に花を飾る暮らしなんかできない」と思っていたのに
たまに花屋に通うのが週1度になり、
周りからも「花が好きな人」と思ってもらえるようになった。
ひとってこうやって、変わってゆけるんだな。
いまだって、花の名前なんかほとんどわからないのに
花は好き、だと思う。
詳しくなくても、わたしなりに。
ちょうど「えい!」と新しい花瓶を買ったところだった。
3つの花瓶と、ひとつのコップに花を飾っている。
もらったお花を、どこの花瓶に挿すのか
考えている瞬間は、いまのわたしが抱えている「幸福な時間」のひとつだ。
組み合わせを考えて、にんまりとする。
ああ、かわいい。
*
「飾りすぎないこと」に気をつけている。
たぶん花瓶それぞれに積載量がある。のだと思う。
もちろん、花の組み合わせにもよるのだろうけど、そこまではわからない。
いちばん小さな花瓶には、水があまり入らない。
だから、たくさんの花を挿さないようにしている。
もっと入る、というのを、ぐっと堪えて
だいたい、ふたつかみっつ。それにグリーンをひとつ。
それがきっと、この花瓶に心地良い量なのだと勝手に思っている。
花たちが暮らしやすい、やさしい環境なのだと。
*
何事にも積載量とか、適切な、っていうのがあるんだろう。
からだにも、こころにも、暮らしにも。
眠りすぎてしまったわたしのからだも、
それは、適切だったのかもしれない。
普段とか、一般的と比べれば多すぎたかもしれないだけで。
「年末年始くらいは自分に甘くしても良い」と言ったあと、
「金欠なのでプレゼントはまた今度」と告げた兄だって
これはこれで、美しい適切なのではないか、と思う。
「自分に甘くしても良い」なんて言って、自分の散財を許そうとしているところも、可愛いではないか。
*
少しずつ、トルコキキョウのつぼみが開いてきた。
きっとこれでいいのだと思う。
心地の良い適切さを探す時間の中に、やさしさがあれば。きっと
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