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シンデレラのハイヒール

【メモ】結婚式の装備

わたしたちはその晩、結婚式の装備について相談をした。
友だちの結婚式に招かれたのはわたしで、相談相手の彼女は少し前に親族の結婚式に出たと言っていた。
この家に来れば、結婚式の装備の諸々が揃う。または、助言をもらえるという算段だった。

わたしたちは、ひとつずつ確認をする。

・ドレス
(以前、友達にもらったやつがある)
・カバン
(去年の誕生日にもらったジル・スチュアートのクリスマスコフレについていたカバンが使えそう)
・ネックレス
(祖母のお下がり、ホンモノの真珠をもらったばかり)
・ピアス
(誕生日にもらったagete)
・ハンカチ
(前の結婚式のときに買った)

書き出してみると、案外少ない。
そして、案外自分で持っている。
これで大丈夫そうだ、と頷きあった。

「靴は?」

つま先が開いていないヒールは?と尋ねられたとき、わたしは笑って頷いた。

あれは、前の家に住んでいたとき。
ふらふらと立ち寄った古着屋なのか古本屋なのかわからないジャンクショップ
なんでもありすぎて、でも欲しいものはひとつもないようなお店に、どうして立ち寄ったのか覚えていない。

でもその日、吸い込まれるように立ち寄って、めずらしく商品のひとつひとつを見た。
何か欲しいものがあったのかもしれない。覚えていない。
でも、あの店に欲しいものなんてあるわけないのに

だから、驚いた。
黒いハイヒールに出会ったとき

そのハイヒールに「ジル・スチュアート」と書いてあったことに。

慌てて値札を見たら「800円」
800円??
ジルのハイヒールが?

驚くとほとんど当時に手にとって、足を突っ込んでいた。
まさかの、ジャストサイズだった。

いやでもハイヒールなんか履かないか。
いやでも800円で、ほとんど傷もないジルのハイヒールを買わずに帰る?

有り得ない。
迷ったのは一瞬で、そのハイヒールを買って帰った。
値段は本当に800円で、税込みで、袋もタダでくれた。

「古着屋で買った、ジルのヒールがあるよ」
わたしは笑った。
「800円だった」
「800円!??」
そうだよと頷いて、今度はふたりで笑った。

結婚式には、あのハイヒールを履くつもりだ。
わたしにぴったりな、ジル・スチュアート。

結婚式の主人公はわたしではないけれど、ハイヒールを履くわたしは、奇跡を掴み取ったシンデレラになる。

どうせ、足が痛くなってすぐ脱ぐんだろうけどね
それまではどうか、背伸びしたシンデレラでいさせて欲しい。
あのハイヒールに出会えた幸福を、その足取りで、渡しに行くつもりでいる。



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