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紅茶の祈り

紅茶でも、飲もう。
そうしよう。

作業中のデスクの、
コースターの上が空いていることはない。
もう、絶対にない。と言ってもいい。

デスクのマグカップは、わたしのお守りだ。

紅茶は、少し手間だ。

冷蔵庫に常備してあるドリップコーヒーは、マグカップに入れるだけ。
インスタントコーヒーとか、粉タイプのお茶も数種あって、これは沸かしたお湯を入れるだけ。

紅茶は、お湯を沸かしたあとフタをして、ちょっと蒸らさないといけない。
知識として、「マグカップをあたためておくのがいい」というのは知っているけど、そこまでは面倒が過ぎる。
それでも、フタをして蒸らすっていうのは
わたしの、特別で愛おしい、ルールのひとつ。

紅茶は愛おしい、と思う。
手間をかけて淹れるというのに不思議だ。
その過程を、愛おしく思ってしまう。

今日は紅茶の引き出しから、いただきもののティーバッグを取り出した。
かわいいパッケージを見つめて、ぽとんとマグカップに落とす。
お気に入りのマグカップを引っ張り出すことを、わたしは忘れなかった。
我が家で唯一の黒いマグカップにお湯をそそぐと、なんだか魔術みたいで、それもよかった。

少しだけお湯を入れて、フタをして。
待つのは苦手だから、そのあいだに別のことをする。
今日は、常備用のコーヒーをドリップした。

ドリップが終わる頃にお湯を加えて、ティーバッグをそおっと持ち上げる。
ゴールデンドロップ、紅茶は最後の一滴がいちばん美味しい。
わたしは今日も、信じている。
信じることが、まばゆいひかりのように、やさしい魔法になればいい。
わたしは、願っているのかもしれない。

願われているのだ、とも思う。

紅茶を贈ってくれたあなたが、わたしに
「やさしくてあたたかい時間を過ごしてね」って
そう、伝えようとしてくれたんだ、って。
一杯の紅茶が、わたしの肩を叩くように。

わたしは、信じている。
あなたが願ってくれたことを。

わたしも、願っている。
あなたの暮らしが、やさしくあることを。

小さく立ち上る湯気を見つめながら。
あなたのことを、思い出している。



※今日のBGM



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