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うちのポスト

本を読んでいたら、疲れちゃった。

本を読むのは好き、なはずなんだけど
最近読んでいなかったから、1時間も集中すれば疲れちゃう。
わたしは、ベッドからのそりと起き上がる。

トイレにでも行こう、と思ったけど
その前に、ポストを覗くことにした。
何かを待っているわけじゃないけど、気分転換も兼ねて、一度玄関を開けてみた。

やっぱりポストには、何も入っていない。
同居人が玄関に近くにいたので、「なにもなかったよ」と告げた。

「なんで見に行ったんだよ」と、彼は笑って言った。

わたしは、なんだか面食らってしまった。
はっ、と息を呑んだ。
さあっとしたもやが、目の前をかすめてゆく。

3秒間、
わたしはしっかりと息を整えて、言った。
「なにか、理由がなくちゃだめだった?」

もしかしたらわたしは、週末に投函したいくつかの手紙の返事を待っていたのかもしれない。
べつに、返事が欲しくて書いた手紙じゃないけれど。
ただ、少しだけ外に出ただっただけかもしれない。歩きたかっただけなのかもしれない。
でも、答えはなかった。

ポストでも見に行こう。
それは、お茶を淹れたり、トイレに行くことと
わたしにとっては大差がないことだった。それだけなのに。

なにかとても、いけないことをしてしまったような
落下するように、そんな感覚へと陥った。

「いや、そんなことはないよ」と、彼は答えた。
なんでもない言葉だった。
質問そのものも、なんでもなかった。
そんなことは、わかっている。

わかっているよ。
わたしは、手紙とポストが好きで
きみは、どっちも特に好きじゃないよね。
ただ、それだけのことなんだ。

わかっているよ。
理由がなくてもいいときだって、あるじゃないか。
君と僕が違ったって

ささいな言葉で、わたしが傷ついてしまったって

そういうことも、あるじゃないか。
そのひとつずつを、その瞬間に受け止めて
そうして、受け流す。

だいじょうぶ、
誰も、何も、悪くない。

わたしはきっと明日も、
ポストを覗きに行く。
何が来ていても、来ていなくても
わたしはきっと、そのことに
安心をする。





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