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730からの願い
笑うしかない。と思った。
平気な顔が、できていたかどうかわからない。
画面の向こうの、みっつの顔が困っていたから
泣き喚こうとも、思えなかった。
平気な顔をしよう。と思った。
わたしのためにも、あなたのためにも。
桜並木を歩きながら、妙な懐かしさが込み上げてくる。
正体を探って、見つけるまでには数日を要した。
もう、忘れていた。
![画像1](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/75833577/picture_pc_f790ef4a932d0cf9b0e7248923473213.jpg?width=800)
2020年の3月30日。
わたしはここでお昼ごはんを食べたあと、会社をクビになった。
4月のあいだはリモートワークの休憩中、このへんを歩いたんだった。
初めてのリモートワークで、最終出勤日を決めて、それまでの3週間ほど
鬱蒼とした空気の中を、歩いていた。
それでも平気だ、と言わんばかりに。
泣いてしまえばよかった、とは思えない。
取り乱したのは一瞬で、「失業保険をもらいなさい」と何人かに肩を叩かれた。
そうして、前を向いて生きていこうと思った。
「会社をクビになっちゃうくらい、ヤバイ世の中になっている」という、わたしの中での事実はぐんと膨れ上がって
ほんとうは、強く首を絞めていた。
泣いたらほんとうにダメになるような気がして、そういうのは本能的にわかるから。
わたしはずっと、笑っていた。
![画像2](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/75833590/picture_pc_be547598ba931067a348f623394427cb.jpg?width=800)
もうすぐだ、と思っていた日は、4月2日に訪れた。
noteの連続更新、730日。
730日っていうとピンとこないけれど、365日を2周。
2022年4月2日
noteの連続更新、2年。
![画像3](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/75833595/picture_pc_03dafd137928f7878d654b823d725461.jpg?width=800)
なんだかぐわりと、きてしまった。
そうかわたしは、
不安の中、次の一手と定めていたnoteに、すがるように、
このパソコンの前に座って、まずはピアノを弾いて。
ピアノ日記だって、この年の1月にやっとの思いで1作目を上げたところだった。
それから動画を試したり、YouTubeを試したり、カバー曲を弾いてみたり、
その中でわたしは、noteでの「ピアノ日記」を選んだんだ。
2020年の4月、走り出したら止まれなくなってしまった。
止まってしまったら、立っていられないばかりか、座る場所もなくなってしまうのだと思っていた。
社会との接点は絶たれ、緊急事態宣言のさなかで友達にも会えない。
あれほど縋っていたバンドもやめてしまって、弾き語りのライブもペースを落として、新曲なんかも全然書いてなくて、
そもそも、2019年は頼まれた仕事もあって忙しかった。それがようやく終わって、「この時計と一緒に2020年を頑張ろう」と思って、飛び降りるような思いで表参道のSTAR JEWELRYで時計を買った。
すべては、これからだった。
![画像4](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/75833628/picture_pc_5f6d0ff6d6830abe222f175f039d4a80.jpg?width=800)
前向きに言えば、「これから」を歩むためのベストな環境を与えられた。のだと思う。
失業保険が受給されることはこの時点でほとんど確定していて、会社都合の退職だから待機期間もない。生活には困らない。
っていうのは結果論で、実はすごくそわそわしていた。
退職に関する書類もすぐ届かないし、会社もバタついているうえに、ハローワークもパンクしていた。
保険証を会社に送り返して、国保に加入するために市役所へ。
それから、年金とか住民税の手続きするために役所には何度か通った。
恥ずかしながらすべてがほとんど初めてで、忙しいのに親切にしてくれた役所や、ハローワークのスタッフさんには頭が下がるばかりだった。
この時期、怒鳴っている人をたくさん見た。
家族は働いているのに、わたしに職はない。
でも、失業保険をもらっているのに、急いで仕事を見つける必要もない。
泣けばいいのに、「この期間を楽しもう」と、やっぱりわたしは笑っていた。
わたしの感情は、ずっと壊れているのかもしれない。悲しみとか怒りは、ずいぶん遅れてやってくる。
![画像5](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/75833696/picture_pc_a5d398cd1c1e498505f4ad970065db1e.jpg?width=800)
ここではないどこかへ
行くことを願って、走り続けて2年。
そのうちの約半分を、自宅で過ごすとは思っていなかった。
無職で8ヶ月を過ごし、
3ヶ月は休職した。
病気のせいもあって、毎日エッセイを書くことは叶わなかった。
書けなかった。
言葉を処理する能力がぐんと落ち、何を言われているのかわからない。言われていることが理解できても、言葉にして発することができなかったりした。
「生きるために書くことをやめなければならない」と、
感情ではなく、もっと切実な身体的な部分で、迷っている場合ではなくて、決定事項になってしまった。
希望の残像。
2021年の秋から冬にかけて、自分のピアノをそう呼んでいた。
残像でもいいから残ればいい。
書くことができなくなっても、ピアノだけは、「パソコンの前に座る」「noteの更新ボタンを押す」ということが、
それそのものが、わたしの未来に繋がりますように。
繋がると、信じている。
![画像6](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/75833704/picture_pc_cc907b2d65a0d660e8ca0c5edf52bf6f.jpg?width=800)
ここではないどこか、なんていう場所を探していたら、結局どこにもたどり着かなかった。
得たものはたくさんある。
それでもやっぱり、「どこかすてきな場所」なんてどこにもないのだと思う。
「すてきな部屋」と言われて、みなそれぞれのイメージを浮かべると思う。そうなったらいい。
そして、願っているだけではそうならない。
たぶん、ゴミを捨てただけでもそうならない。
もっと直接的なイメージと、そのための手順が必要になるだろう。
でも、「花のある部屋」だったら、明日にも実現可能だと思う。
わたしに足りなかったのは、そういう具体的な答えだと、もう気づいている。
でもね、それでもね
![画像7](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/75833716/picture_pc_d9183a63a8d21fbf2ef02384f3dc2acc.jpg?width=800)
書くことが好きだ。と思う。 いま、ようやく、そう思っている。
それが趣味だとか、仕事とか、そういうカテゴリがどうでもいいと思えるくらい。
愛している、と思う。
愛しているから面倒ではない、とかそういう話でもない。
今日だって、たっぷりマトリョーシカを20分聞いてから書き始めている。
面倒だなあ、と思っていた。
それでも、わたしがどこへ飛ばされても、
言葉を綴る最低限の思考力を保てる身体と時間
キーボードとディスプレイがあれば、きっと。
それが、わたしの得たものだと思う。
2年かかった。
2年前は「エッセイは難しい」と言っていた。
できれば書きたくない、と思っていた。
いまよりうんと、薄暗い気持ちで。
他にやることとか、できることがあったらきっと選ばなかった。
どこへも行けなかったかもしれないけど、得たものはある。見つけたものもある。
もうこれからは、「なにもない」なんて言わないで
![画像8](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/75833728/picture_pc_9c612a6395314c42ed75eeabb650f388.jpg?width=800)
どこへも行けなくてもいい、というのは卑怯だ。ということにも、気づいている。
いまもなお、別の場所を探している。
だけど、
もう、どこへも行けなくていい。
どこへも行かないならばせめて、ここで
紡ぎ続けたい。と思っている。
いま、3年目の挑戦に飛び込んだところ。
そして、3年目の挑戦を終えたとき、
1年後のわたしが「バッカじゃないの?」って、
どうか、笑い飛ばしてくれないかなァ。
(追伸)
note連続更新1周年のときには、自分でプレゼントを買いましたが、今年は買い損ねてしまった+新しい試みとして、Amazonのほしいものリストを置いてみます(・∀・)
これも、やってみたかったことのひとつ。
【photo】 amano yasuhiro
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