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美しいままに

日付が変わる前の、暗い帰り道。
あしたも仕事だから、今晩か明朝にはエッセイを書きたい。
でも、その前にお風呂に入りたい。
でも、本当はソファーに倒れたい。
本音を言っていいならば、ベッドに沈みたい。

本音ーーーそう言うならば、もうちょっと努められるような気がしている。
からだの、ほんの小さなバランスがもう少し整えば
「面倒」のその先にある本音、「今日中にいろいろ片付けたい」にたどり着ける気がする。

ああ、煙草を吸いたい

ときどき、ほんとうに素直にそう思う。
一服したら頑張れる、そんな気がしてしまう。

季節が変わって、あなたのことを思い出す。
会社のベランダ喫煙所には、もう長く訪れていない。
そこへ向かうひとが、上着を着て「さむい」と言っているのを見ると、心臓が少し痛む。

煙草は、冬だと思う。
寒い時期こそ、美しかったように思う。

それでもわたしは、煙草を吸わない。

ドクターストップだから、と言えばそうなのだけれど
わたしは「1本だけ」というのが苦手だった。
5分だけ眠る、とかも苦手。
お菓子は、個包装になっていないとぜんぶ食べちゃう。
だから、煙草も吸わない。

そしていま、煙草を吸って
もし、と思う
もし、「美味しくない」と思ってしまったならば

それはすごく、さびしいことのように思う。

煙草の味は、気温や季節で確かに変わってゆく。
そして、自分の体調でも違う。
「今日は煙草おいしくないなあ」という日は、確かに存在する。

だからいま煙草に火をつけて
おいしくないなどと思ってしまったらーーー

わたしは「煙草がおいしくないからやめたひと」になってしまうのではないだろうか。

愛している。
いまでも愛している。
わたしの心臓は煙に守られ、身体の奥の方はきちんと、アメリカンスピリットでできている。
これからも、そういうふうに生きてゆきたい。
なぜだか、そう思う。

だから、煙草さえ吸わなければ
わたしはこれからもずっと
アメリカンスピリットを愛してゆけるのだ、と信じている。



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