美しいままに
日付が変わる前の、暗い帰り道。
あしたも仕事だから、今晩か明朝にはエッセイを書きたい。
でも、その前にお風呂に入りたい。
でも、本当はソファーに倒れたい。
本音を言っていいならば、ベッドに沈みたい。
本音ーーーそう言うならば、もうちょっと努められるような気がしている。
からだの、ほんの小さなバランスがもう少し整えば
「面倒」のその先にある本音、「今日中にいろいろ片付けたい」にたどり着ける気がする。
ああ、煙草を吸いたい
ときどき、ほんとうに素直にそう思う。
一服したら頑張れる、そんな気がしてしまう。
季節が変わって、あなたのことを思い出す。
会社のベランダ喫煙所には、もう長く訪れていない。
そこへ向かうひとが、上着を着て「さむい」と言っているのを見ると、心臓が少し痛む。
煙草は、冬だと思う。
寒い時期こそ、美しかったように思う。
*
それでもわたしは、煙草を吸わない。
ドクターストップだから、と言えばそうなのだけれど
わたしは「1本だけ」というのが苦手だった。
5分だけ眠る、とかも苦手。
お菓子は、個包装になっていないとぜんぶ食べちゃう。
だから、煙草も吸わない。
そしていま、煙草を吸って
もし、と思う
もし、「美味しくない」と思ってしまったならば
それはすごく、さびしいことのように思う。
*
煙草の味は、気温や季節で確かに変わってゆく。
そして、自分の体調でも違う。
「今日は煙草おいしくないなあ」という日は、確かに存在する。
だからいま煙草に火をつけて
おいしくないなどと思ってしまったらーーー
わたしは「煙草がおいしくないからやめたひと」になってしまうのではないだろうか。
*
愛している。
いまでも愛している。
わたしの心臓は煙に守られ、身体の奥の方はきちんと、アメリカンスピリットでできている。
これからも、そういうふうに生きてゆきたい。
なぜだか、そう思う。
だから、煙草さえ吸わなければ
わたしはこれからもずっと
アメリカンスピリットを愛してゆけるのだ、と信じている。
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