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朝、事実よりも真実を

すうっと、抜けるような感覚だった。
または、ふうっと落ちるような感覚。

何かがいなくなって
ここにはいられなくなって
大きく欠いた、と思う。

大きく欠いた。
でもそのあとの行動や決断は、きちんと自分に委ねられていた。
悲しむのか、怒るのか
追うのか

唇を噛むことすらできずに、一度静かに見送った。
いつか帰ってきてくれればいい、と思ったけれど、そんなに易しい話ではない。と悟る。

煙草を辞めてしまったことが、時折寂しい。
ほんとうはいつも寂しかったはずなのに、いまでは時折になってしまった。

煙草を吸うのがいちばん手っ取り早かった。
次は、食べること。
でも「夜間の間食をしない」というのは、現在の自分との約束事にしている。
いま、それを破るほどではない。

散歩に行こう、と思ったけれどそれもやめた。
3ヶ月の休職を経てから、身体は少し重かった。
休職中はあんなに歩けていたのにーーーひまだったのだと思う。心だけでなく、身体も。
いまはもう、あまり歩けない。
仕事って疲れるンだなあ、と毎日感心する。

歩いたところで深夜のコンビニに寄ってお菓子を買って食べる、ということも禁じてしまったし。
ああ、こうしてできないことを数えるのはよくない。
いまはただ、事実を”確認”しただけ。

悲しくない、なにも。

並べた事実をお店のように並べて、頬杖をついて見つめた。
煙草、おやつ、散歩
大きく欠かれてしまった感情。
些細な出来事で、「書こう」という気持ちは簡単に店仕舞いする。

書きたいから書いている、と毎日言えればよかった。
時折そういうこともあるだけで、「毎日書く」と決めた、その約束を守るために書いている。
自分に、落胆しないために。

朝にしよう

そう思えたら、ふわりと気持ちが楽になった。
そうだ、朝にしよう。
朝に書こう。

これほどまでに夜を愛しているのに、朝は朝で筆が進むのは不思議だった。
そもそもこの部屋のカーテンは閉めっぱなしだし、あんまり陽も入らないから、時間なんて関係ないような気がするのに。

朝がいい、と思った。
朝がわたしを守ってくれる、と思えた。
なんだか容易く信じられた。
そうしたらもう、白いシーツに飛び込んでいた。

ついこのあいだ、シーツを洗ってふとんを干して、冬物をすべて片付けたところ。
心地の良いわたしの居場所。

書かないことを選んだわけでも
眠ることを選んだわけでもない。
なぜだかそのとき、強く思ったことを覚えている。

事実としては書かずに眠った。
ということも、深く理解している。

それなのに違う。
わたしの中ではたったひとつ。

朝を選んだ。
これが、わたしの真実だった。






※朝を、愛している。


※now playing




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