だから、シュークリームを食べよう。

お風呂に入るのが、好きじゃない。
正直に言えば、面倒だと思う。

お風呂に入る、という表現も本当は正しくなくて
バスタブに最後にお湯を張ったのはいつだろう。
ずいぶん長いこと、シャワー暮らしをしている。

お風呂を出たあと、ボディークリームを塗るのも、髪を乾かすのも面倒くさい。
化粧水だけは塗らないのと、顔がカピカピになるので致し方ないけど。

わたしは実にいろんなことを、面倒だと思っている。

それでも毎日シャワーを浴びて、
あとはできる限り、毎日掃除をして、花の水を替えて、洗い物を溜めないようにしている。

それは、わたしがまじめなにんげんだからではなくて
悲しくなりたくない、だけだった。
落ちている髪の毛を見て、溜まった洗い物を見て、「家事もできないわたし」と思ってしまうよりも
ささっと適当にでも、片付けてしまいたかった。
だいじょうぶ、と言い聞かせたかった。
溜まった洗い物と向き合うことも、やっぱり”面倒”という言葉で片付いてしまう。

明日のわたしへ、とも思っている。
今日、それなりに家事をやっておけば、明日はサボってもあんまり気にならないと思うからね。
動けるときに、動いておこうね。
わたしはすぐ、眠たくなってしまうのだよ。

今日も、シャワーを浴びて、ちゃんと髪も乾かして、
洗い物も掃除もして、花の水も替えたんだから
そんなにごちゃごちゃと考えることはないじゃないか。
ちゃんとピアノも弾いたし、こうしてエッセイも書いているんだし。

「ちゃんとする」っていうのは、呪いみたいな口癖だった。
言われて気づいた。
「そんなちゃんとしなくていいよ」と言ってもらうたび、わたしは「もうちょっとちゃんとするから」と、じんわりと涙を浮かべていた。

ふまじめでどうしようもない人間なのに、自意識過剰。
なんで、「ちゃんとできる」とか、そうすべきとか、思っちゃったんだろうね。

今日も、悪くなかったじゃないか。
最低限の日課を終えて
最低限の日課しか終えてないじゃないか、というわたしは、とりあえず床下収納のあたりにでもしまっておこう。
たとえ、度の過ぎた昼寝をしてしまっていても
「ほんとうはやりたかったこと」にたどり着けなかったとしても
今日もきちんと、牙を研いでおきましたよ。

だからなにも考えずに、シュークリームでも食べよう。
深夜だからとか、太るとか、身体に悪いとか、そういうのは置いといて
べつに、いいじゃないか。

シュークリームひとつで世界が明るくなることは有り得るけれど
シュークリームがたったひとつで、絶望をもたらすことは、ないのでしょうから。




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