小さくて近いところ
朝、もにゃもにゃとパソコンの前に座る。
出勤前に、書いて、弾いて、を終わらせたい。
別に、朝が得意というわけではなくて
夜が眠かっただけで
わたしはここに座っている。
*
ものを書く能力の半分くらいは、適切なBGMを選ぶ能力である。
というのを、わたしは何度も噛み締めている。
書きたいことがあるから書いている、ということは稀で
だいたいはどこかから、引っ張り出す。
ようやく書くことが決まっても、うまく集中できないことも多い。
没入の手助け、が音だと思っている。
*
今日は特に眠かったので、身体を起こすためにスガシカオを選ぶ。
寝ている家族を起こさないために、ヘッドフォンを……
するのも面倒な朝もある。
わたしはそおっと
ほんのわずかに、スピーカーのつまみをひねる。
聞き慣れたイントロと、聞き慣れた声が小さく聞こえてくる。
*
小さく聞こえてくる、というのは
なんだか、秘密を共有するような特別さがある。
ということに、どうしていままで気づかなかったんだろう。
だってあなたの声が
ずいぶん耳元で聞こえてくるような
そんな気がしてならない。
もう少し、あなたの声が聞きたい。
でも、ボリュームを上げない。
わたしは小さい音を捕まえるために
感覚の多くを
あなたの声へと傾けてゆく。
*
あなたのことを知りたい、と思ったら
分解して、
拡大して、
まじまじと見つめるように暮らしてきたけれど
少し離れて
ボリュームを下げて
見たり聞いたりするのも、いいかもしれない。
同じものでも
大きかったり小さかったりすると
違って見えるのに。
つい、大きいもののほうが便利だとか、よく見えるとか、おなかいっぱいになるとか、
お得な感じがして選んでしまうけれど。
*
たまには立ち止まるように、小さくしてみるよ。
少しだけ、距離を置いてみるよ。
大事だからって、抱き潰すことはないわけで
片手だけ繋いでいても愛していることはあるし。
これって、どちらの愛が大きいかとか、関係ないのに。
耳元のような、でも遠くのような
小さいあなたの声を聞きながら
今日は、そんなことを考えている。
※昨日聞いていたスガシカオが、そのままになっていたから
※ものを書く能力の半分くらいは、適切なBGMを選ぶ能力である。
※今日のスガシカオ
スタバに行きます。500円以上のサポートで、ご希望の方には郵便でお手紙のお届けも◎