適切な胃袋
ダイエットをしていたら、自然と食べられる量が減ってきた。
おかげでわたしは、「おなかいっぱい」という代え難い幸福を手放すことなく、今日に至っている。
だって、我慢し続けることって、どう考えたって美しくない。
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じゃあ来週、食べ放題に行くって言われたらどうしよう。
最近は、そんなことを考えている。
それも、超高級なやつ
自分じゃ一生行かないような場所に連れられて、奢られると言われたら
一度だけ連れてゆかれた、椿山荘のランチのことを思い出している。
なんだか雰囲気呑まれて緊張して、味なんか全然わからなかったけれど。
でももし、
何をしても恥ずかしくないと思える友人と、めいっぱいの美味しいものを食べられるとしたら…
ああ、うっとりする。
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まっとうなダイエッターなら、この日に備えて食べる量を落とす。
または、断腸の思いでお断りを入れる。
対してわたしは、まっとうでありたくない。
正しく努力すれば、必ずまた体重は落ちる。
でも、高級料理食べ放題は二度とないチャンスかもしれない。
少なくとも、今までの人生では経験がなかった。
だから知りたい。
すべての感覚を研ぎ澄ませて
わたしはその日まで
食べ続けて、胃袋を広げることを選ぶと思う。
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毎日書くこと、というのは胃袋の大きさを整える行為に似ていると思う。
いつ大食いのチャンスが訪れてもいいように
その日は来ないかもしれない。
そもそも、その日ってなに?
本を出版すること?
執筆を依頼されること?
褒めてもらえること?
どれも嬉しいけど、狙ってない。
チャンスはそう易く降ってこない。
努力していれば報われる可能性があるだけで、報われるとは限らない。
もし努力が報われるならば、ライブハウスで知り合った友達はみんなメジャーデビューしているか、あしながおじさんを見つけている。
*
ただ、いつか
「その日」が訪れたそのときに
きちんと飛び込めますように
「ダイエット中なんで食べれないんです」なんて言いませんように
自分があんまり、遠くへ行き過ぎてしまわないように。
今日も、牙を研ぐように
いや、最高の状態で食い尽くせる適切な胃袋を保つように
書くことと弾くことをやめられずにいる。
※now playing
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