中堅作品、ならではのあじわい。
明治を代表する建築家の一人、曾禰達蔵(そねたつぞう:1852~1937)さん。
いや、漢字ムズいわ!という方、
気軽に、ソネタツさんと呼んでみてください。
誰も怒りはしません。たぶん。
この方、東大時代の同期に、明治建築3大巨匠と呼ばれる、東京駅や日本銀行の設計者、赤坂離宮の設計者、横浜赤レンガ倉庫の設計者なんかがいたりして、その人たちの陰に隠れがち。
だけど、その人たちが「日本の顔」となるような建築を設計してきたならば、ソネタツさんは、「日本の中堅」と言えるような分野に、西洋建築(当時の日本で目指すべきものだった。)の領域を広げた最初の人だと言える、と思っています。
そこで、代表作と言えば三菱1号館(正確には師匠であるジョサイア・コンドルの補助)や慶應義塾大学図書館が上がる中、今日はソネタツさんの中堅なお仕事を紹介できればと思います!
初代呉鎮守府(現存のものは2代目)建築委員→三菱入社。三菱1、2、3号館(師匠の補助)ののち、初めて自身で設計した建物が、こちら!
1900 旧三菱銀行神戸支店:
兵庫県神戸市中央区相生町1-1-21
装飾の配置や建物の比率が、完璧なバランスで一体化しています。
市民から長く「ファミリア」という呼称で親しまれてきました。
次に、処女作から、いきなり死の前年の作品となりますが、
1936 三井住友銀行大阪中央支店:
大阪府大阪市中央区高麗橋1-8-13
こちらも、バランスの整った古典主義。
以上は銀行建築ですが、ソネタツさんの本懐はオフィスに有り!
1918 旧日本郵船神戸支店ビル:
兵庫県神戸市中央区海岸通1-1-1
メリケンビルと呼ばれています。
以上、ご覧になって、ぜんぜん中堅じゃないじゃん、大手じゃん。
って思われた方、いませんか?だって上のメリケンビルの住所、1-1-1とかになってるよ。ぜったい大手じゃん。
僕も、そう思えてきました(笑)
しかし、あと3つほど、紹介させてください。
僕が好きなのは、こっちの方なんです笑
1906 旧東京倉庫神戸支店兵庫出張所:
兵庫県神戸市兵庫区島上町1-2-10
現在も石川ビルとして現役です。
ここまでくると、町の中規模なオフィス、って感じがしませんか?
三菱を定年退社した年の、おそらく最初の作品です。
1933:明治屋京橋ビル(右):
東京都中央区京橋2-2-8
僕たちがイメージする「まちのオフィス」に、かなり近いですね。
四角いビルという感じから、機能性を感じます。
さすがは東京で、再開発ビルのプロムナード反対側に似た比率の建物を建て、「歴史に敬意を払って保存してます」と誇り高くアピール。
最後に大阪の明治屋ビルですが、東京のそれよりも古いようで、お世辞にも綺麗な状態とは言いずらく、いい意味で使い倒されてます。さすが関西笑。
1924 明治屋ビル(左):
大阪府大阪市中央区南本町2-2-2
おもしろいことにこちらも隣には、建物に敬意を払っているような同規模のオフィスが建っています。東京は同一敷地内、同一企業による新旧の対比でしたが、こちらは別敷地、別企業によるものと思われます。
といってもやはり文化財のような趣は無く、両者とも、使い倒されています(笑)
以上、短いながら、ソネタツ作品の一端を写真で紹介させて頂きました。
大きく壮麗な建築
文化財として大切にされている建築
日常的に使われている建築
みなさんはどれがお好きですか?
僕は、大阪の明治屋ビルを訪れた際に、利用者の方が、「このビル、ボロいから」などと愛着を持って言われているのを見て、やはり嬉しく感じます。
もちろん、これは僕から見たソネタツさんの建築であり、曾禰達蔵さん本人が考え、目指していた方向とは一切関係はありません。
僕が普段使いの建築が好き、というのは、僕の育ちや少ない経験の限界であり、曾禰さんご本人は、それこそ国の顔となり得るような、美しく壮麗な建築を目指されていたかもしれません。
そこに迫るには、沢山の時間と集中力、忍耐力が必要でしょう。僕は歴史研究を専門としているので、自分で肝に銘じておきたいところです。
しかし、それにしても、僕には普段の生活の中で、ときめいてしまう建物や風景が多すぎる。出会うものすべてに時間をかけていたら、とても生活が成り立たない。だけど忘れ去るにはもったいない。。。
そんなゆる~い葛藤を解決し、自分の興奮を公開・共有しているのが、このnoteです。
ソネタツさんの紹介のはずが、まさか自分の言い訳に話が及ぶとは。
理屈と感覚のバランスを取りつつ、どちらも成長させていきたいですね。
曾禰達蔵さんの建築を、どうぞよろしくお願いします!
(20210412)
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日本で建築教育を受けた大抵の人は、工部大学校(現在の東京大学工学部建築学科)卒業生第一号の方々の名前を耳にしたことがあります。
辰野金吾(たつのきんご:東京駅や日本銀行本店の設計者)
片山東熊(かたやまとうくま:赤坂離宮や京都国立博物館の設計者)
妻木頼黄(つまきよりなか:横浜赤レンガ倉庫の設計者。中退しているため卒業生ではないが、上2人と並んで明治建築三大巨匠とされる。)
さて、あと2人いらっしゃるんですが、そのうち1人が、ソネタツさんこと、曾禰達蔵!
みなさんの中で、ソネタツさんの代表作は何になりましたか?
ウィキペディアにはその他の作品もリスト化されているので、気になった方はそれぞれを調べてみて下さい!意外とお住まいの近くにもあったりして?
そして最後のおひとり、
佐立七治郎(さたてしちじろう)さんは、現存している作品があまりに少なく(ウィキによると日本水準原点標庫、日本郵船小樽支店等)、日頃から作品を楽しめる場所は限られます。ここでの説明は諦めます。すみません。
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