人生を変えた一枚のポスター
大学の卒業旅行は九州の一人旅でした。
1年の夏合宿で訪れた時に乗れなかった路線をすべて踏破し、九州の鉄道路線完乗を果たす旅でした。
途中、同じ会社に内定した同期と吉松駅(肥薩線)でバッタリ出会うという素敵な偶然にも恵まれたりして、基本的には楽しくマイペースで充実した旅行でした。
そんなさなか、佐賀県の西唐津という小さな終着駅に立ち寄ります。
乗客の多くは一つ手前のターミナル唐津駅で降りてしまうため、ここ西唐津には出入庫に必要な最低限の列車しか来ない、そんな寂しいところです。
(そのほかに唐津線のディーゼルカーもやってきます)
ふと駅の出口を見ると、一枚のポスターが目に留まりました。
途端に胸の奥から熱いものがこみ上げてきました。
「学生時代にサッカーをすることは、ついに叶わなかったな…」
みるみるうちに全身を包み込む後悔の念。
泣こうが喚こうが、これからは社会人として生きていかなければならない。
止められない時の流れ。
巻き戻しはできない時の流れ。
動かしようのない、冷徹な現実を突きつけられた思いでした。
しかし「だからといってサッカーのことを忘れないで」というメッセージを、この時に無意識に受け取っていたのかもしれません。
もしあのポスターを見ることがなかったら。
会社の同好会でサッカーを始めることはなかったかもしれない。
金輪際サッカーと関わることをあきらめていたかもしれない。
苦しむこともないが、刺激のない退屈な人生になっていたでしょう。
マイペースな卒業旅行の、良いスパイスとなりました。
めぞん一刻流にいえば春のワサビ。
いや九州だから柚子胡椒か?
人生を変えてくれた、大学サッカーのポスター。
もちろん、いいほうに。
※トップ画像 九州の鉄道完乗を果たした西鉄宮地岳線・津屋崎駅
末端区間の廃線により現存しません。