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けいおうたおせ!早慶戦|エッセイ

 秋のある日曜日、僕は明治神宮球場に行った。
 東京六大学野球の早慶戦を見に行くためである。

 この年の秋期六大学野球早慶戦はアツい展開だった。
 早慶戦は六大学野球の看板試合となっていて、リーグ戦の最終週に控えている。しかしリーグ戦なのだから、試合を重ねるに従い一部の大学の順位は決定する。そのため最終週を待たずに優勝校が決定してしまっていることが多い。
 だがこの年は最後まで優勝校が決まらず最終週を迎え、優勝候補は早稲田か慶應に絞られていた。この週末を制し2勝を果たしたチームが今期の王者となる。
 僕はその2日目、日曜日に観戦に出向いた。

 初日は早稲田が勝利し、あと1勝で優勝という好機を迎えていた。
 ちなみに僕は早稲田の学生です。もちろん早稲田側の応援席に行った。
 球場にはものすごい数の人が来ており、入場に時間がかかって僕が入場した時にはすでに3回の表、慶應の攻撃になっていた。2-0で押されている。

 ここで抑えろ!はい!はい!はい!はい!

 応援席ではコールが巻き起こっていた。
 コールのおかげもあって慶應の攻撃を0点に抑えることができ、チェンジとなった。早稲田の攻撃になると応援歌を歌う。歌詞は知らなかったが、僕は曲に合わせて手拍子をした。

 攻撃中はコンバットマーチを歌ったり、頑張れのコールをしたりする。
 野球応援に行くのは初めてだったが、簡単なコールだったのですぐに覚えられた。けいおうたっおっせー!

 応援をしているうちに楽しくなってきた。
 僕はそもそもスポーツ観戦が好きではない。選手は知らない人たちだし、特に肩を入れて応援するということができない。
 出身の高校は県内ではかなり野球が強いほうで、甲子園に行ったことも何度もあるが、僕は一度も応援に行かなかった。高校内では裏切りもののような扱いをされた。
 そんな僕でも、さすがによく知られた早慶戦である、一度くらいは行っておきたいと思っていたし、どうせ行くなら今回のような熱い展開の時に行こうと考えて、今回は球場に参戦した。
 そして、けいおうたおせ!と歌っているうちに、なんだか慶應を倒したくなってきたのである。

 結果は残念ながら敗北だった。4ー0で負けてしまった。
 僕は結構悔しいと感じた。
 試合の決着は翌日に持ち越しとなった。翌日に勝った方が今度こそ真の王者となる・・・

 ここで僕が認識したのは、近年の早慶戦では恒例のあの情報であった。
 翌日の月曜日、慶應大学は応援のため休講となる。しかし早稲田大学は通常通り授業が行われる。
 僕はこれを知って遺憾に思った。この状況で全学を挙げて野球部を応援せずにどうするというのだ!

 僕は翌日の午前中、キャンパスに「早慶戦のための全学休校へ」という立て看板を設置し、午後は授業を自主休講とし神宮球場へ向かった。

 と書きたかった。
 しかし、実際の僕はいま教場でこの記事を書いている。
 今日は4コマも授業がありどうしても休めなかった。2つの授業では試験範囲の発表もあることになっていた。

 この記事を書いていることが、僕のささやかな抵抗である。


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