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社歴が長いほど優遇される問題

転職を繰り返してきたからこそ見える労働市場の構造的な問題がある。それが「社歴が長いほど優遇される問題」だ。

時代が時代なので多少は和らいできたと思うが、特にメーカーにおいてはいまだ根深い。手始めに「転職する人間はなぜまた転職するのか」の問いについて考えたい。

長らく「根性がないから」と言われてきた。シニアは令和になってもそう信じている人が多い。

次に「一度転職するとハードルが低くなる」。これはまあ、あるだろう。転職をまったくしない人と複数回する人の間には、このハードルの差があると思う。なお、わたしにとってはハードルなどないに等しい。目の前にはひたすら平らな大地が広がっている。

それから根深い問題として「ブラック企業スパイラル」がある。一度ブラック企業やブラック業界につかまってしまうと、なかなかそこから抜け出せない。

もう世界線が違うのだ。ブラック企業で過ごす1年はホワイト企業の10年分に相当する。だけどホワイト企業から見たら、短い期間で辞めた根性のない人間にしか映らない。

ブラック企業の年収は、負担業務に比べて法外に低い。ホワイト企業はその年収をみて、たんに能力のない人だと判断してしまう。本当に根深いのでこの問題はまた別の機会に。

そして、「社歴が長いほど優遇される問題」だ。「転職する人間はなぜまた転職するのか」の問いに戻ると、単純に考えて、「社歴が短くて冷遇されるから」だ(上で書いたような理由もあると思うけれど)。

世の中の人事担当者は、本当にこんな単純なこともわからないのだ。そう言うと、長く続けてもらうためのインセンティブとか言い出すと思うが、早く辞めてもらうためのインセンティブでもあるし、その会社も当然導入しているだろう能力・成果主義を歪めるものでしかない。

適当にごまかしてないで、はっきりと、ウチは年功序列だ言い切ってほしいものだ。

わたしが草食系ブラック企業の(株)ネコアにいたころの話だ。「社歴が長いほど優遇される問題」が究極の形で出ていた。もちろんメーカー。

極端な例だとお断りしておくが、新卒入社の社員がびっくりするくらいアホだった。草食系ブラックは、社員のモチベーションと成長機会を根こそぎ奪うという特徴がある。

ネコアがモデルの小説(↓)

彼らも被害者だ。だが、中途入社の社員からしたら知ったことではない。待遇に圧倒的な格差があるのだから。

中途社員は、他社で揉まれてきた人間なので、草食系ブラック企業で新卒からマイナス成長してきた人間と比べると、感覚として3倍以上能力が上だった。

だが、悪魔の社内規定により、中途社員は社会人になってから、この会社でずっとB評価を受けてきたとされてしまう。ネコアの人間はよほど上司に嫌われてなければB+以上。つまり、中途社員が入社した時点で、給与に圧倒的な差がある。

びっくりするくらい不平等な社内規定なのに、時代が悪魔に味方をした。就職氷河期のため、安い給与水準でも中途採用できてしまう。ブラック企業の人間も流れ込む。結果、新卒のアホが高給をむさぼり、中途社員は薄給でこき使われた。新卒からいる社員は使いものにならないので、中途社員が仕事をするしかないのだ。

年に一度、昇進する社員が発表されるが、新卒の人間ばかりだった。中途社員は、入社前はずっとB評価とみなされたうえ、入社後の何年間は考課対象から外された

人事の人間が説明するには「中途の人はよくわからないから」ということだった。何のために、書類審査や採用面接をしたのだろう……。アホがここに極まる。

究極の新卒至上主義。暴虐の帝国だった。ここまでの状況はなかなかないだろうが、「社歴が長いほど優遇される問題」は日本社会を根深くむしばんでいる。

今日も人事の人間が言う。「なぜ中途で入ったやつらはすぐ辞めるのか……」。冷遇されるから辞めるに決まっているだろう。

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