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いつもと違う銭湯に行く

 昨日はいつも行っている施設近くの銭湯が急遽お休みになってしまった。
 そこでスタッフさんが別の銭湯に連れて行ってくれることになった。

 いつもの銭湯に行く時には、スタッフさんから風呂券をもらって行っているのだが、今回は違う銭湯に行くのでお金はどうなるんだろうと少し気になっていた。
 しかしスタッフさんがすでにそこの風呂券を用意してくれていたのでありがたかった。まさに至れり尽くせりである。

 「福をもらいに行くぞー!おー!」
 出発する直前、男性スタッフのSさんがいきなりそんな掛け声を掛けた。
 いったい何のことだろうと思ったら、どうやらそこの銭湯の名前が縁起が良さそうな名前だったからだそう。
 「スタッフの方が気合入ってるよー」
 利用者一同からの突っ込みを受けながら施設を出た。

 銭湯までは歩いて10分ほどで着いた。
 だが着いて早々、スタッフのSさんから思いもよらないことを聞かされた。
 「ここの銭湯は番台のおばちゃんが厳しいという噂なので、中に入ったらできるだけ静かにおねがいします」
 そっ、そうなのか!縁起が良さそうな名前なのに、番台のおばちゃんが厳しいって…。だいじょうぶなのだろうかと不安になった。

 玄関で靴を脱いだ後、厳しいと噂の番台のおばちゃんに、少し緊張しながら風呂券を渡した。
 「はい、ありがとう」という声を聞く限り、とても穏やかそうな人だったのでちょっと安心した。

 「羽田さん、ロッカーの鍵を取るからちょっと待ってて」
 女子の脱衣所に入ろうとした時、女性スタッフのHさんが言った。
 どうやらここの銭湯では、先に鍵を取ってからロッカーに向かうシステムになっているらしい。
 いつもの銭湯はすでにロッカーに鍵がぶら下がっているので、ロッカーの番号を自分で見る必要がなかった。しかしここは鍵とロッカーが別々の場所にあるため、それらを照らし合わさなければならなかった。この時に誰かの目が必要になるので、全盲者が一人でここに通うのはちょっと難しいかもと思った。

 浴室はいつもの銭湯に比べて広く感じた。
 シャワーもいつもの銭湯と同じように、固定されているタイプの物だった。だからカランもいつもの銭湯と同じだろうと思ったので、蛇口の位置などの詳しいことをHさんに聞かなかった。
 これがまずかった。いつまでたっても暖かくならないなあと思ったら、水とお湯の蛇口が逆だったことに気づいた。
 また髪を洗う時、シャワーの出し方がよく分からず、すぐ横にいたHさんに見てもらったら、棒のような形のレバーを左に回すとお湯が出ることが分かった。
 「後ろの列のヘッドつきのシャワーにしますか?」
 そんな私に気を使ってHさんが聞いてくれた。だが移動するのもめんどうだったので、「だいじょうぶです。いつもの銭湯でこのタイプのシャワーにも慣れているので」と丁重に断った。
 大阪に出てきた丁度1年前は、固定タイプのシャワーに馴染めなくて、銭湯に行くのが憂鬱だったけれど、今ではあたりまえのように使いこなしている。慣れとは恐ろしいものである。

 体と髪を洗い終えて、いよいよお風呂に入る。
 お風呂は普通のお風呂の他に、電気風呂や水風呂、さらにはサウナや露天風呂もあるそうだ。
 お風呂の種類もだいたいいつもの銭湯と同じような感じだった。しかし個人的には泡風呂がなかったのが少し残念だった。

 その中で普通のお風呂と露天風呂に入った。
 どちらもいつもの銭湯よりも広かった。それに湯加減もとても良かった。
 浴室も脱衣所も全体的に雰囲気が落ち着いていて、一人でゆっくり入るには丁度良いところかもしれない。

 そんなわけで、いつもと違う銭湯も良いもんだなあと思った。そしてたまにはスタッフさんも交えて、またこうしてお出かけできる機会があればおもしろそうなのになあとも思った。

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