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白杖は魔法の杖ではないけれど

 石井健介さんのポッドキャスト番組『見えない私の聞けば見えてくるラジオ』の第1回放送を聞いた。
 知人がフェイスブックで番組告知の投稿をシェアしていたのをたまたま見かけたことで、石井さん、およびこの番組の存在を知り、おもしろそうだなあと興味を持ったので、早速聞いてみたのだ。

 ポッドキャストの解説文や、番組内での本人の自己紹介などによると、石井さんはブラインドコミュニケーターとして活動をしているほぼ全盲の視覚障碍者。36歳の時に、朝目覚めたら突然目が見えなくなっていたことで視覚障碍者の世界に足を踏み入れたのだとか。

 番組の中で白杖(はくじょう)の話題が出た。
 細かいディテールを忘れてしまったが、TBSラジオのスタジオがある最寄り駅の登りのエスカレーターではハリーポッターの音楽が流れていて、それを目印にしているという話から、ハリーポッターは魔法の杖を持っているけれど、視覚障碍者が持つ白杖も魔法の杖だと思うというような話をされていた。
 白杖のことを「魔法の杖」と表する人は、健常者・視覚障碍者問わずけっこういるような気がする。しかし白杖を「魔法の杖」と表現するのは、何だか視覚障碍を美化しているみたいで、個人的にはあまり好きになれない。
 だが「白杖を魔法の杖のように振り回したくなる」というような石井さんの話には少し共感できるところがある。

 これは私の周りだけかもしれないが、盲学校で男子たちが休み時間に白杖でチャンバラごっこをしてふざけているところを先生に見つかり、「白杖はおもちゃではありません」と注意されることは、盲学校のあるあるネタかもしれない。
 また私と同世代の女子だったら、傘を手にした時、「カードキャプターさくら」の主人公さくらのように、傘をくるっと回して遊んだことはなかっただろうか。
 そう、まさにあんな感じである。
 私の場合、中学生の頃「コメットさん」がテレビ東京系列でリメークアニメ化された時、コメットさんがバトンを回すまねを、誰も居ない盲学校の昇降口で一人密にやっていたことがあった。
 全盲なので、さくらやコメットさんが杖(?)やバトンをどうやって回しているのか、その具体的な動きまではよく分からなかったけれど、何となくこんな感じだろうと白杖をくるっと回す雰囲気を楽しめればそれだけで良かったのだ。

 今こうして考えてみると、確かに白杖は魔法の杖ではないけれど、それでも白杖を魔法の杖のようにくるっと振り回してみたら、何か楽しいことが起こりそうな、そんなツールなのかもしれないと改めて思ったのだった。

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