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短歌九首 【毎日お題まとめ②】
◯電車
三年間同じ電車に乗っていた背の高いひとを思い出す空
◯読書または本
長き夜に没頭したい 待ちわびた鈍器のごとく厚き新書本
◯風
空を分かつ飛行機雲の裂け目から白風の吹き、蜩のこだま
◯ケンカ
冷戦が三日続いて君が言う「今夜はビーフシチュー」「うん、いいね」
◯秘密
言わないで あなたの心を盗んだこと ひそやかに花開く月下美人
◯アイドル
彼らな
短歌十一首 【毎日お題まとめ①】
◯未読
既読にはなりえぬ最後の言葉たちを蒼きハーバリウムに沈めて
◯望遠鏡
天文台の望遠鏡をかわるがわる覗いた僕らをつなぐ流星
◯記念品
胎毛で筆をつくれり みどりごの手ざわり思ふ母の記念品
◯ゲーム
僕は今、岐路に立っている それなのにルート選択の画面が出て来ない
◯泡
音のなき閨は濃藍の海の底 泡沫の吐息にひそむ言の葉
◯触れる
ひそやかに熟した何
短歌二十四首 【2023年9月まとめ】
愛おしさに気づいて触れた指、まるで夏の魔法だブルーサルビア
生きている尊さ噛みしめ水澄のつくる波紋をしずかに見てゐる
優しさは所詮偽善だ。それでもきっと、今も誰かが救われている
釘を使わずに木材を継げるならあなたにもっと優しくありたい
秒針の音がやけに響く夜中 取り込まれてもいい闇がある
愛を信じきれない「ぼく」はまだ物置の奥でうずくまったまま
色なき風 主人うしなひしデスクには万年筆