正欲を読みました。
以前から気になっていた朝井リョウさんの『正欲』をついに読みました。
この本が私たちに投げかける大きなテーマは、「多様性とはなにか」「多様性を受け入れるとはどういうことなのか」だと思います。この本の内容に具体的に落とし込まれた小テーマは
①「マジョリティ」「マイノリティ」について
②人との「繋がり」について
の2点でした。
読み終わったあとは、個人的には爽快感などはなく、重くどっしりとした気持ちでいっぱいになりました。ですが、それは決して悪い意味ではなく、それくらい重たく、深いテーマで自分自身の価値観を殴られたような感覚だったからです。 誰にとっても身近なテーマですので、自分自身や自分の周りの人たちに落とし込みやすいです。
あらすじや考察などは特に本記事では書きません。(調べたら出てくるので!)あくまで、読み終わって私が感じたこと、つまりただの感想文です。ネタバレ要素はいれないつもりですが、もちろん本を読んでから、感想を読んでいただけると嬉しいです。上記で挙げた小テーマ2つを軸に感想を述べていきます。
①「マジョリティ」「マイノリティ」について
少しずつですが多様性が認められる時代になってきています。さまざまな企業の多様性を意識した取り組みだったり、「性」について扱うエンタメだったり、私たちは色々な面でその変化を日々感じることができます。
でも、私は多様性について"知っている気でいた"だけなのかもしれません。この本を読んでそう思いました。「マイノリティ」とはあくまでマジョリティ側の人間が定義したもので、マジョリティの人たちの価値観の範囲内でしか想像されていないこと。その勝手に定義づけされたマイノリティにも含まれない人たちがこの世にはいるのではないか、そういう人たちはマジョリティに認識すらされていないのではないか、そういった疑問の投げかけが本文に出てきます。私は「マイノリティ」を本当に理解していなかったのかもしれません。でも、結局大事なのは、「決めつけないこと」と「自分の想像の範囲外の世界を生きてる人がいることを念頭に置いておくこと」なのかなと感じました。マイノリティに属する人たちのなかにも、理解を求めてる人もいるでしょうし、求めてない人もいるでしょう。だから、マジョリティに属する人が「(マイノリティの人たちは)理解してほしいんだ!」と決めつけることはただのエゴにすぎないことを忘れたくないです。それから、自分の想像外の世界を生きてる人のこと(それは性癖・思想・環境など…すべてにおいて)も忘れないように心がけようと思いました。難しいかもしれませんが、それが「多様性」な世の中につながる一歩なのではないでしょうか。
②人との「繋がり」について
私の周りの人たちとの繋がりについて深く考えるきっかけをもらいました。親子、家族、友人、恋人、同僚など、社会で生きている限りたくさんの繋がりが私たちにはできます。その繋がりをちゃんと大切にできているか、蔑ろにはしていないか、そんなことを考えさせられました。
本文の中に出てくる様々な登場人物を見て、「こうはなりたくないな」と思う人たちが結構いました。総じて共通しているのは「相手の立場や気持ちに寄り添えず、自分の価値観で一方的な押し付けになっている人」でした。①の感想にも繋がることですが、結局は自分以外の人のことって、よくわからないんですよね。でもそれって当たり前のことです。その当たり前を、この本を読んでふと思い出しました。わたしたちは自分以外の人の考え、立場、価値観、思いをちゃんと想像できているか。自分勝手になっていないか。そんなことを考え、ひとまず一番蔑ろにしてる(と自身で自覚している)母親に連絡をいれ、母親の気持ちにたってみた親孝行をしてみようと思いました。
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