本に包まれた空間に身を置く

幼い頃から、小さくて、狭くて、薄暗い、図書館の分館を居心地のいいものとしていた私。

ある時、岩波少年文庫のファージョンの「ムギと王さま」という童話集を読みました。素敵な童話が並ぶ中、一番心に残ったのは、「作者まえがき」でした。

ファージョンが幼い頃住んでいた家には、本が溢れかえっていたが、何よりも二階にある小部屋は、他の本棚を追い出されてしまったような本たちが積まれていたそうです。「本の小部屋」とみんなが呼んだその部屋で、ホコリを払いながら色々な本を読んだと。

山のような本。
色褪せたスツールや踏み台。
その上にも本が積まれている。 
うっすら白いホコリをそっと払うと、明かり取りの窓から入った細い光に当たってキラキラしている。

少しかび臭いようなその空間で、宝探しのように本を抜き出し、読んでみる。陽がだんだんと落ちて、手元の文字が読みにくくなっても、明かりをつけることすら忘れてしまう時間。

私にとってそこは、自分を楽しませてくれ、時に助けてくれる、物語や知識たちに囲まれた安心できる場所。

そう考えていました。

いつか、そんな空間に身を置きたいと、子どものころから思ったものです。

そこから「はんぶんこ」は出発をしています。一人で過ごす小部屋を共有できるように、静かに動き始めます。

はんぶんこ
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saitama / fujimi / japan

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