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自転車を漕ぎながら

先週末、久しぶりに自転車に乗った。

次男が生まれた頃に買った、子どもを乗せられる電動自転車。
最初の頃は、長男を前に乗せて次男をおんぶして。
次男の腰が座ってからは、前に次男を乗せて後ろに長男。
そうやって、3人でいろんなところに行った。

空色の大好きなこの自転車を、ヴォクシーにのせて浦和から連れてきていたんだけど、バッテリーの充電器を忘れるという失態を犯して長らく埃をかぶっていた。
バッテリーの充電器を調達できたので、満を辞しての復帰である。

「久しぶりに自転車で出かけようか」
声をかけると、2人は目を輝かせた。
ずっと乗っていなかった自転車を雑巾でふきあげ、空気を入れる。

前に次男。後ろに長男。
2人とも大きくなっていて、ベルトがきつい。
少し調節してしっかりしめた。

「しゅっぱーつ…」
私の掛け声に、2人が応える。
「しんこーう!!」

ペダルを踏み込む力を、自転車がアシストする。

風を切る。
「いいねぇ」
思わずニンマリしてしまった。

田んぼの脇を抜け、川を渡り、坂を下る。
「たのしいねぇ」
ご機嫌な子どもたちは歌を歌う。

そうだ、私はこの時間が好きだったんだ。


思えば、最後に3人で自転車で走ったのは、浦和を出た日の朝だった。
大声で怒鳴る夫を家に置いて、3人で自転車で保育園に向かったあの朝。
溢れそうな涙を必死に堪えて、ペダルを漕いだ。

あの朝からずいぶん遠くに来た。
浦和を走っていた自転車でいま、10代を過ごしたまちを走る。
3人で風を切り、歌を歌いながら。


ふと、自転車を漕ぐ高校生の私とすれ違ったような錯覚を覚える。
だけど振り返らない。
ただただペダルを交互に踏み込みながら、自転車を前に進ませる。
2人の子どもを乗せて。

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