『好きなものは好きで愛着もあって手放したくなくて』ー詩ー

大きなボストンバッグを買った
夜逃げするわけではない
かといって入れるものもない
さしずめ今夜の満月を入れてみた
まだ余裕があったので
白い馬を入れてみた
まだまだ余裕があったので
1番ふかふかそうな雲を入れてみた
一度あの上で寝てみたかった
もしかすると空腹の足しにも
なるかもしれない
何であれ舟もあるといいかもしれない
オールはいらない
流されるままそのまま
そのうち部屋にあるものを
片っ端から入れていった
手垢で一杯のテディベア
古くなった手鏡
初任給で買った皮のパンプス
洒落た服などもうないけど
あ、言っておくが旅の予定などない

“もっと早く買えばよかった“
うん、そう、毎度毎度そんな事を思う

ガラクタみたいな部屋は
綺麗さっぱり
こころは何故かからっぽ

最後にバッグのファスナーを
見上げながら閉めた

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